タイ投資促進委員会は2015年1月1日から、新たな投資奨励制度を導入する。 これまでの地方ほど恩典が厚いゾーン制を廃止し、事業の重要度に応じて恩典を与えるという。
国際的競争力を高める 新たな投資奨励策
タイ投資促進委員会(BOI)が発表した新投資奨励制度の目玉は、投資地域(ゾーン)に関わらず、タイ国内企業の成長を促す事業ごとに恩典を与える点だ。申請は2015年1月1日から。各事業は、最長8年の法人税免除などの税制優遇措置を与えるAグループ(A1~A4)と、法人税免除は基本的にないBグループ(B1・B2)に分類される。
新制度では、「中所得国のわな※」からの脱却を掲げ、タイ経済への貢献度によって恩典が受けられる仕組みとなり、以下のような事業の場合、基本恩典に加えて、メリットベースの追加恩典を付与する。
例えば、研究開発部門、人材開発・研究、科学技術機関への支援など、タイの産業構造の高度化や技術革新に寄与する分野。また、ゾーン制廃止に伴う処置として、地方開発に貢献する投資にも恩典を与える。
お題目である“国際競争力”を高める手段として、貿易に直接関わる国境エリアや、経済特区への投資も奨励する。特に、一人あたりの所得が低い20県や、テロにより地域経済が疲弊するタイ南部国境県(ヤラー、パッタニー、ナラティワート、サトゥーン、ソンクラーの4郡)における投資の優遇措置を強化。さらに、政府が指定する5県の経済開発区への投資奨励も拡大させる。これらは、2015年発足予定のAEC(ASEAN経済共同体)により経済活動が活発化する国境エリアへの準備ともいえる。
いずれせよ、2015年1月1日から新たな投資奨励が導入される。法人税免除、機械・原材料の輸入関税免除など、業種や生産工程・条件によって、恩典を受けられるかどうかが変わる。すでにBOIを取得している事業は、これまで通り旧制度を引き継ぐことができる。今後、工場の拡張(設備投資)や新規投資を考えている企業にとっては、考えさせられる年となりそうだ。
詳しい問い合わせは、BOIの日本語窓口(メール)jpdesk@boi.go.thまで。
※安価な労働力や外資誘致などを活用して経済成長を実現した国が、産業構造の高度化や技術革新への努力を怠ることで成長が鈍化し、高所得国への移行が困難になる状況。
グループごとの 恩典内容 および業種例
A1
国の競争力を高める産業、 設計や研究開発産業など
・電子設計 ・ソフトウェアの開発 ・ゴミあるいはゴミから作った燃料による発電とスチームの製造
A2
国の開発に関するインフラ産業。タイではまだない、またはあまり投資されていない先端技術を導入している産業
・自然材料による有効成分の製造 ・特殊繊維の製造 ・鉄道貨物輸送
A3
タイで多少投資されており、先端技術を導入している産業
・バイオ肥料、有機肥料、バイオ殺虫剤の製造 ・最新技術による食品製造 ・乗り物用エンジンの製造
A4
先端技術を導入している産業
・リサイクル繊維の製造 ・熱処理 ・機械、あるいは機械アクセサリーの組み立て
B1、B2
先端技術を導入していないが、バリューチェーンには重要な裾野産業
B1 ・スポーツ用品あるいはその部分の製造 ・楽器の製造
B2 ・地域統括本部*(旧ROH) ・国際貿易センター*(旧IPO) ・貿易ならびに投資支援事務所*
*メリットによる恩典対象外