非議員首相、上院議員すべてを任命制に。
「半分の民主主義」と批判も
憲法起草委員会(CDC)が策定を急ぐ、新憲法の骨格が固まりつつある。
目玉の新選挙制度では、まず首相選出は国会議員以外、いわゆる非議員の選出も認め、任期は最長2期とした。
下院議員は、小選挙区比例代表制をそのままに、得票率が基準に達しなければ、当選としない最低得票数の規定は設けない。これにより、小政党にも議席獲得の可能性が高まる。議会は小選挙区250人、比例代表200〜220人で構成。比例代表の選挙区は北部、南部、東北部を二分割、中部を二分割の6ブロックに分ける。過去に汚職や選挙に絡む不正で有罪判決を受けた者は、下院議員への立候補資格を失う。
一方、上院議員については定員200人のすべてを任命制とし、任期を6年、再選は認めない。議員は、元首相、軍首脳、元高級官僚、公社トップ経験者などから選出する。
また、首相や閣僚に対する罷免権に加え、首相が選ぶ閣僚や公社トップ人事を審査する権限をも与える。さらに、CDCは、新たに首相や閣僚、国会議員に対する規律を作成し、監視機能を持つ組織を新設。規律に背けば、弾劾の是非を問う国民投票を実施できる力を与える。
新憲法の骨格について、タイ人ジャーナリストはこう評価する。
「非議員が首相となることや、選挙を経ないで選ばれる上院の権限が強く、政治家の力が削がれる。まるで『半分の民主主義』と言われたプレーム政権時代(1980〜88年)と同じです」。
タクシン元首相派のタイ貢献党、ウォラワット元下院議員は「任命制で選ばれる上院が、最高機関であるべき内閣をコントロールすることは、もはや民主政治とは言えない」と批判。
民主党のニピット副党首も「首相と内閣が不信任決議されると同時に下院議会も解散とするのはおかしな話だ。本来であれば、首相と内閣だけに留めるべきだ」と不信感を募らせるなど、新憲法成立への道のりは険しそうだ。
とはいえ、プラユット暫定首相は、外遊先で今年中の新憲法成立と、早期民政移管を約束しているだけに、急がねばならない。
着地点はどうなるのか、今後の成り行きに注目したい。