バンコク名物の屋台。存続か、否か
先日、海外メディアが「バンコクから屋台が消える」と報道し、衝撃が走った。これを受け、バンコク首都圏庁屋台規制担当のワンロップ知事諮問機関委員長は4月19日、「路上にある屋台は撤去するが、衛生的に管理できるよう専用エリアを設置し、引き続きバンコクの屋台(ストリートフード)文化は継続させる」と火消しコメントを発表した。
そもそも歩道上の屋台出店は、1992年に制定された「街並の清掃・公序法」に違反しており、これまでは低所得者向けに政府が“お目こぼし”をしていたに過ぎない。だが近年、国家平和秩序維持評議会(NCPO)の方針のもと、バンコク首都圏庁も屋台規制を強化。ラチャダムヌーン・クラーン通りで24時間出店禁止にしたことを皮切りに、1000店以上もあった最高裁判所エリア、ビクトリー・モニュメント周辺、プラトゥーナム、シーロム通り、スクンビット通りと次々に規制し、屋台は姿を消した。
タイ人にとって身近な食事の場である屋台は、低所得者にとっては起業手段の一つ。だが、「屋台で歩道が塞がれる」、「道路にはみ出た屋台が渋滞を引き起こす」と問題も尽きない。先日、CNNの屋台ランキング調査で、23カ国中1位となったバンコクだが、外国人観光客が「屋台がなくなれば、バンコクの魅力もなくなる」と嘆くのは、あくまでも“よそ者”の意見で、地元の人の生活を無視したものと言わざるをえない。前述のワンロップ氏も、「今の屋台は衛生的とは言えず、スリや置き引きといった犯罪や、(歩道にスペースがなく)車道を歩いて跳ねられる人がいるなど、事故の危険もある。世界一に選ばれたのは喜ばしいが、良い面だけを見ているに過ぎない」と苦言。その上で、「屋台は完全になくなるのではなく、改善に向けて動いている」と規制に理解を求めた。
政府は、8月末までに首都圏内の歩道から屋台を全て撤去すると発表。今後は、ヤワラートとカオサン通りを、“屋台の聖地”にするとしているが、その行方に注目が集まる。