大通りから一本入った静かなマンションの一角。そこにあるのが、
多彩なイベントの場を提供する「Salon hors du Temps(サロン・オ・デュ・タン)」。
主宰者として、新たなスタートを切ろうとする加古川成子さんを訪ねました。
サロン文庫、ピアノ演奏会、パントマイムショー、ダンス教室、講演会、ワークショップ……「ここはいったい何をする場所なの?」。変幻自在にカタチを変えるサロンに思わずそう尋ねたくなってしまうのが、成子さんが4年ほど前から主宰する「サロン・オ・デュ・タン」です。
成子さんが思い描くのは、サロンが“みんなの癒しの場、夢を後押しする場、メッセージを発信する場”になること。場を提供することで、タイに暮らす“誰か”の居場所を作るとともに、“誰か”の夢に向かう一歩を踏み出す手伝いをしたいと、サロンの活動を続けてきました。そして今、成子さん自身が新たな一歩を踏み出す時が来ました。
「これまでは個人的な活動としてイベントを行ってきましたが、しっかりとした母体を持とうと現在、財団設立のための手続きを進めています。タイに住まわせてもらっている身として、タイに恩返しをとずっと考えていました。今後はイベントを通じてタイへの寄付を募るなど、タイに還元できる活動も行っていきたいです」。
サロンを立ち上げた当時は、 学んできたピアノを生かした“音楽サロン”を提供していこうと考えていた自分が、今のサロンを見たらきっと驚くに違いない。こうして、成子さんの予想をはるかに超えた人との繋がりから、今の“カタチなき場”が生まれていったのです。
やりたいことを声に出したら
新しい出逢いがやってきた
「サロン・オ・デュ・タン」がオープンしたのは、2013年末。実母の死をきっかけに、「自分がやりたいことはなんだろう」と成子さんが考えた末の行動でした。
自分たちが暮らしていたマンションの一室を、友人の協力でリノベート。サロンの記念すべき1回目は、知人の音楽家を招いた演奏会から始まりました。
さぁ、2回目はどうしよう そう考えている時に友人から「こんな人はどう?」と紹介を受け、出演者が決定。以降、友人・知人からの紹介はリレーのように繋がり、イベントの幅が広がっていったと成子さんは言います。
「サロンを開いてうれしかったことのひとつに、今までの自分の人生では全く出逢わなかった人たちとの出逢いがあります。落語を全く知らない私が、柳家三之助さんや林家染雀さんといった落語家の方々を紹介してもらってサロンに招いたり、サロンをオープンしてからは予想もできない繋がりにただ驚くばかりです」。
一室だったサロンが、昨年から隣の部屋が空いたことで二室に増え、今では月に1、2回行われるイベントの予定が年末まで埋まっているのだそう。
出来ることが増えてうれしいという一方で、忙しさも倍増するのでは? そう問いかけると、忙しくても、周りの人たちのおかげでやりたいことが実現できているのだと、成子さんは感謝を口にします。
「みなさんがタイ生活の悩みを打ち明けられる場を設けたいと昨年から『相談室』を始めました。開設後、心の悩みを抱える人たちと向き合えるプロの心理士が必要だと思い、探していたのですが、その時も専門家である知人がパッと名乗り出てくれました。本当に周りに恵まれていますし、感謝してもしきれません」。
オープン当時からカタチを変えてきた「サロン・オ・デュ・タン」。これからもきっと、人と人との化学変化から、たくさんの新たな“場”が生まれていくのでしょう。
まるで自宅のようにリラックスできるサロンの一室。「気軽にお立ち寄りください」(成子さん)
PROFILE
加古川 成子 Seiko Kakogawa
「Salon hors du Temps」代表。1956年生まれ。熊本県出身。国立音楽大学教育音楽科を卒業。94年、タイ人の旦那さんとの結婚を機に来タイ。2004〜12年まで「ふれあいトークコンサート」を主催。13年12月に「サロン・オ・デュ・タン」をオープン。現在、財団設立を申請中。リフレッシュ方法は娘との会話、海を見ること。
サロン・オ・デュ・タン
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ハンドメイドの雑貨や食べ物が並ぶマーケットなども開催。
[問い合わせ]
Address:Room 4D, 4thFl, GS Mansion, Sukhumvit Soi 35
Tel:089-818-0869
Facebook:Salon hors du Temps
編集部より
「実はまだ、やりたいことがいっぱいあるの」とうれしそうに話してくれた成子さんは、今年で還暦を迎えたとは全く信じられず。その姿を見ていると、何歳になってもやりたいことをやっていいのだと教えられた気がしました。