虐げられていたタイ最大の農産業。新政策によって風向きが変わるか
9日発行のタイラット紙が、8つの省庁が現在抱えている問題と対策を報じた。それによると、商務省は物価上昇の抑制、観光・スポーツ省は減少した観光客の誘致、財務省はコメ買取制度における支払いなどと並び、農業・協同組合省が担当する天然ゴム農家の問題も列挙されていた。
ゴム農家の問題は、インラック前首相の肝いりだったコメ買取制度の陰に隠れ、弊誌でも大きく取り上げてこなかったが、2013年の8月には政府に反対するゴム農家が幹線道路を封鎖し、話題となったのは記憶に新しい。前首相は、タイ北部の票田を獲得するため、稲作農家を優遇するコメ買取制度を開始させたといわれているが、一方で支持層が少ない南部のゴム農家は無下に扱われてきた。
改めてタイの天然ゴム産業について説明したい。タイ全土で600万人もの農家が従事し、タイ農業最大の輸出品として、2012年の輸出額は、約2900億バーツ(約9000億円/カシコン銀行HPより)を計上。その額は、約890億バーツの米をはるかに凌ぎ、実に世界の約30%も占め、“世界最大のゴム生産国”と言われるようになった。気候的に適しているのが南部であり、72%ものゴム農家が同地域に分布している。
ゴム農家が怒りの声を上げている最大の理由は価格の下落。市価よりもはるかに安い金額で卸しているのが実情であり、1キロ辺り22〜28バーツとされている(市価は72〜78バーツ)。また、インラック政権は価格上昇を狙い、輸出制限を行ったものの、実際は価格が上がることもなく、輸出額が下落したことも、憤慨の理由の一つと言われている。12年には価格下落を抑えるために450億バーツの緊急予算が組まれたが、大きな成果を上げることはなかった。
収入の減少と政策の不備という2つの側面で虐げられてきたゴム農家。タイラット紙によると、国家平和秩序維持評議会は支援策として、ゴム農家に1ライ辺り2520バーツを支給するという。これまで冷遇されてきたゴム農家にも、ようやく陽が当たろうとしている。