アイドルになりたがるタイの子どもたち

プレゼント欲しさに個人情報をネットで公開する少年少女。
時代の進歩に追いつかない、リテラシーと個人情報の問題

スマートフォンの爆発的普及による功罪といえるだろう。10歳から15歳未満の子どもたちの間で「ファンクラブ(以下FC)の会員募集」と題して、自らの動画をユーチューブに投稿するのが流行っているという。

自らの容姿をわざわざ世界中に晒す目的は、プレゼントを送ってもらうことやフェイスブックの「いいね!」の数を増やすことなど。ただし、プレゼントをもらうために住所や名前、連絡先などの個人情報もおおっぴらに伝えているというから、問題にならないわけがない。

FCには、いくつかのルールがある。

①会員は毎月プレセントを送らなければならない(しかし、お返しはなし)

②会員のランキングをつける

③会員同士でけんかをしてはいけない

④10歳以上のみが対象など。

実際にいくつかの動画を確認すると意外にも男の子も多く、彼はノートに自らの住所を記し、読み上げながらプレゼントの郵送を要望した。当初、これらの動画が広まると「単に物乞いをしているだけでは?」「一体、応募する人なんているの?」といった批判的な意見が大半を占めた。

保健省精神衛生局のアンポーン・ベンチャポンピタック女医は「思春期の子どもたちは、周囲や社会に認められたいという願望が生まれる。昔と違って、今はSNSを使い、子どもでも簡単にFCを作れるようになった」と説明する。教育の重要性についても触れ、「急にインターネットを止めさせるのもよくないが、親はSNSの正しい使い方を理解させないといけない」と促した。

また、精神科医のワルット医師は「家族間での関係が希薄となり、親がSNSの間違った利用方法を子どもに教えていない」「アイドルやタレントと同じように注目されたいという願望から、FC会員募集という安易な行動に走った」と分析している。

すでにユーチューブにアップされていた子どもらの映像はかなり削除されたが、未だに閲覧可能なものもある。家に届くのは、決してプレゼントだけではないという現実を目の前にしたとき、子どもたちは一体どう感じるのだろうか? 手遅れにならないことだけを祈りたい。

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