タイを拠点にASEAN市場を開拓
MD 平田 豪
《プロフィール》
1966年11月10生まれ。兵庫県出身。92年法政大学文学部卒業、同年イトーキ入社、2006年シンガポール駐在、10年イトーキ・タイランドMD。現在に至る。
「タイを拠点にASEAN市場を開拓します」
―今期(2014年1月〜12月期)も第1四半期を終えました
前期は、前々期が洪水(2011年)からの復興需要とチャイナプラス・ワンの顕在化で、新規投資や企業進出が相次ぎ、業績が上振れたということもあり、前年比ダウンという結果となりました。とはいえ、洪水(11年)以前に比べれば、順調に推移していることも確かです。また今期は、年初、デモによる影響でBOI(タイ投資委員会)の事務処理がストップしていましたが、現在は徐々に認可業務が進んでいるようです。政情不安のなかでも、事業拡大を図る企業や新たにタイへ進出する日系企業が増えていることもあり、トレンド的には今後も需要増を見込んでいます。
つまり、タイは多少の問題が起こっても、経済成長が進む大メコン圏(GMS :Greater Mekong Subregion)の中心国であることに変わりはなく、外資企業にとっては重要な投資相手国ということです。
―タイのオフィス家具最大手である「モダンフォーム」と提携されましたね
弊社では、今後タイを東南アジア市場へ進出するための主要拠点とする予定で、そのための基盤づくりの一貫です。今年で現地法人設立(2007年)から7年目を迎えました。これまでは、日系企業向けにとどまっていましたが、今後はモダンフォームが持つ販路を活用して、タイの現地企業の需要を掘り起こしていきます。
具体的には、中国で生産している新興国向けブランド「joyten(ジョイテン)」に代表される製品群を販売しつつ、オフィスデザインの受注拡大を図り、将来的には製造を含めた“包括的業務提携”までを見越しています。タイでの基盤を盤石にし、本格的にASEANマーケットに打って出るということです。
―タイ駐在は、何年目ですか
2010年の赤シャツデモ騒動後ですから、3年半が経ちました。赴任してすぐに洪水があり、復興需要を経験するなど、厳しい状況が続きましたね。ただ、タイは20年前に卒業旅行で来て以来、何度も訪れていたので、プライベート面での苦労は少なかったですね。
―海外赴任は何ヵ国目ですか
2ヵ国目です。タイの前はシンガポールに3年駐在していました。シンガポールは、管理された国といいますか、箱庭的な印象があります。逆に、タイは歴史が古く、風土・文化に奥深さを持ち、豊穣な土地が人々を豊かにしています。一方で、デモや自然災害といったアクシデントもあり、まさにアメージングな国ですね。
海外に出る前は、東京で営業畑を歩んできました。初の海外赴任の辞令が降りたのは40歳のときです。それまで課長だった職責が、突如、現地法人の社長ですから色々と大変でした。最も戸惑ったのは、全てを自分でジャッジをしなくてはならないとこです。
日本では何を購入するにしてもバジェットがあり、その予算枠の中で決めてきました。ところが現地法人社長は、何をするにも予算の上限がなく、すべてを責任者として判断することに日本との大きな違いを感じました。他にもスタッフへの評価やベースアップ交渉の対応などシンガポールでの経験は大きかったと思います。
―シンガポールで、経営者としての素養を得たわけですね
大事なのは、その国の文化・風土にあわせつつ、日系企業としての文化をキープすることです。まだまだ模索中ですが、この国におけるビジネススタイルと日本流を上手くミックスさせるのが、カギだと思っています。海外という認識を持ち、“日本村”から脱却して、上手くローカライズできればと日々、模索中です。
―趣味が海外旅行と聞きました
夫婦ともに好きですね。休みが取れたらの話ですが。旅行ではないですが、海外駐在員となってからは、視察も兼ねて、出来る限り近隣諸国を訪問するようにしています。とにかく、国が違えばすべてが変わります。百聞は一見にしかずです。―2014年度の目標を聞かせてください
現在のところ、売上は順調に推移し、最終的な目標は20%増を目指しています。今後は、ASEAN戦略の一貫で、タイ(現法)からみた海外売上比率を上げて行こうと考えています。先日、ベトナム・ハノイの新ノイバイ空港のラウンジを1億円で受注できました。ミャンマー、カンボジアにも販路を拡大していきたいですね。タイ国内に関しては、モダンフォームとのシナジー効果を発揮し、販売チャネルを強化していきます。そして、海外案件の受注を増やし、将来的にはタイを中心とするASEAN展開を図ります。
編集後記
来年創業125年を迎えるオフィス家具大手「ITOKI(イトーキ)」。そこには、老舗メーカーにありがちな保守的なイメージはない。タイ家具最大手の「モダンフォーム」との提携は、タイ国内における基盤を盤石にするためであり、その先に見据えるASEAN展開への備え。趣味は「海外旅行」という平田氏は、プライベートでは行けずとも、今年に入りすでに5ヵ国以上を視察する。「知ることが大事」と話す通り、海外での成功の秘訣は“一見にしかず”が試金石なのだろう。(北川 宏)