首都圏庁が都庁前広場でイルミネーションイベントを開催
高過ぎるコストと不明な使途に多くの批判が集まる
年末年始、バンコクの街並みはイルミネーションで彩られた。家族連れやカップルが楽しむ華やかな光の陰で、ある騒動が持ち上がっている。
ことの発端は、2015年12月28日に行われたバンコク首都圏庁でのスクンパン知事の記者会見。その場で知事は「Bangkok Light of Happiness」なるイルミネーションイベントを都庁前のラーンコンムアン広場で行うことを発表。「年末年始に開催すれば観光客が集まり、経済に恩恵をもたらすだろう」と語った。期間は2015年12月30日から1ヵ月間。500万個のLEDを使うため、総予算は3950万バーツに上るという。
これに対し、国民から不満が噴出。「たった1ヵ月で3950万バーツ?」「なぜアクセスが悪い都庁前を選んだ?」「500万個も使っているようには見えない。水増しでは?」などの声が一斉に上がった。
会計監査事務所(OAG)と国家汚職制圧委員会(NACC)は監査に踏み切り、資金の使途、首都圏庁と民間業者の関係などを調査。すると、汚職を疑うような事実が次々と浮上してきたのだ。OAGのピシット総裁は「そもそも、3950万バーツもの税金を投入するのに、都議会から承認を受けずにプロジェクトを進行したことが問題」と話す。また、今回のイベントは、クリオ・ツアー&トラベルという会社が運営しているが、同社は契約締結前からイベント開催の準備を始めていたなど、癒着を疑わせる証拠も見つかった。同総裁は近く、都知事を聴取する意向を示した。
正月明け、会場に足を運んでみたが、確かにアクセスが良いとは言い難い。来場者はほぼ地元のタイ人で、見かけた観光客は、たまたま辿り着いたであろう白人カップル一組だけという有様。
ただ、正直な所、なかなか見応えのあるイルミネーションだった。ちょっとした出し物のほか、タイの伝統衣装を着た女性が記念撮影に応じるコーナーなど、イベントを盛り上げようとする工夫も見え、日本人でも一見の価値はあるように思えた。
現場の人間の努力が見えるイベントだけに、こういった形で注目されるのは残念でならない。