インラック前首相、肝いり政策により再び起訴される!?
かつての“コメ大国”タイが覇権を取り戻し、今年再び世界一に躍り出ようとしているさなかに、信じられない事実が浮かび上がってきた。
話はインラック前首相が実施したコメ買取制度までさかのぼる。票田を得るためのバラマキと揶揄された肝いり政策は、2012〜13年にタイをコメ輸出国第1位から転落させ、多くの禍根を残す結果となった。農家からコメを高値で買い取るため、自ずと市価が上がり、売れなくなるという悪循環は、タイの農業力の低下を招いたばかりか、コメを余らせる結果となり、上半期は「腐ったコメが埋もれている」という報道も度々されてきた。
それが、インラック前首相が政治の世界から離れて以降、つまり今年に入り、価格を大幅に値下げしたことにより、世界中で売れに売れ、上半期の輸出量は実に前年比61・29%増。昨年よりも150万トン多い、900万トンの輸出が見込まれている。
それだけであれば何も問題にはならなかったが、インラック前首相時代に争点の一つとなったコメ買取制度に関する汚職の調査を進めるべく、専門機関のコメ調査委員会が実際に調べたところ、297万7000トンものコメが“消えていた”ことが判明。これを受けて、国家平和秩序維持評議会(NCPO)は、全国のコメ倉庫1800ヵ所、1950万トンの調査に乗り出すことを明らかにした。首相府は「国に提出されている総量と5%でも違った場合、倉庫を担当する役人、オーナーを訴える」と警告した。
3日からはじまったコメ調査は、早くも驚くべき結果が報告されている。わずか12県のうち、8県に何らかの不正が発覚。いずれも新米がなくなり、古米、古古米ばかりが残るという有り様で、多くの新米が国内のデパートなどに“私的に”売られたものとみられている。そして、この混乱を招いた張本人として、インラック前首相にも白羽の矢が立っている。最悪の場合、兄のタクシン元首相と同じく罪人となり、投獄されることもあるという。ちなみに現在も残っているコメをすべて売却するには、少なくとも3年はかかるとされている。
【写真上】7日、スパセート・サワンセーン大佐とコメ調査委員会はアユタヤ県のコメ倉庫を調査したが、不可解な点はみられなかった。(8日=マティション)