コーセー(タイランド)

コーセー(タイランド)

MD 山本 佳史

《プロフィール》 1964年生まれ。大阪府出身。1987年同志社大学卒業、同年コーセー商事(現コーセー)入社、大阪南営業所配属。その後、広島・名古屋・北海道ストア・千葉第2支店、チェーンドラッグ部中四国・九州統括を経て、2013年5月より現職。
 

タイ独自の販売手法を確立させます

―2015年がスタートしました
昨年は、ご存知の通り政情不安の影響で弊社も上半期は、経済成長の鈍化や政情不安による消費マインドの低下で、少なからず影響を受けました。 ただ、タイ人の美意識は高く、化粧品事業を生業とする弊社への影響は軽微となり、政情不安が収まった下期は、好調に推移しました。なにより、タイ進出は、昨年で満30周年となり、毎年売上は上がっています。日本では考えられない市場です。



中間所得層の増加=市場拡大というわけですね
市場は拡大していますが、残念ながら業界内のシェアはそれほど伸びていないんです。魅力的なタイマーケットを狙って欧州や韓国メーカーが、次々に進出してくるので、競争は激化しています。それに、タイ人にとって販売している商品はけっして安くはありません。日本のように若年層が気軽に買えるという状況ではありませんから、ターゲット層は富裕層に限定されてしまいます。そういった意味で、日本とは違った販売戦略が必要でしょう。



販売チャネルも日本とは違いますか
現在は、日本と変わらず主に百貨店での販売ですが、日本と違うのは、タイでは毎年、百貨店や巨大ショッピングモールが増え続けている点でしょう。自ずと弊社の店舗数も比例して増加するので、一定水準で売上も伸びるというわけです。 とはいえ、前述した通り、新興勢力の進出で競争も激しくなりつつあり、今後は販促・PR戦略次第でどうなるかは、わかりません。



タイ独自の販促スタイルが必要というわけですね
タイにおけるスマートフォン普及とSNS利用者数は、目を見張るものがあります。そこで、LINEを使った販促を開始したところ、瞬く間に700万人の登録(スタンプ配信)がありました。追随するライバル社がまねするほどの反響でしたよ。



新年度(1月〜12月)に入り、具体的な戦略は
私は日本時代からお店を回るのが好きで、いつも一人で回っています。デモで売上が厳しい中、お店を回っていて、少し気付いたことがあり、5月にある試みをしたんです。すると売上は急上昇。 その後の政情不安でいったんは休止しましたが、8月から再スタートさせたところ、下期は二桁以上の伸びになりました。今年度はこの流れを続けていきたいと思ってます。 具体的な内容をお伝えできないのは残念ですが、日本とは違うアプローチです。



海外赴任は初めてと聞きました
タイ法人の日本人は、200人いるスタッフ(販売員含む)のうち、たった一人です。正直、孤独でしたね。少しでもコミュニケーションを図れるよう、最初の1年間は、かなりタイ語を習い、今でも週2回学校に通っています。組織の意識改革にも取り組みました。 タイでは、高級百貨店でも従業員が平気で雑談したり、携帯を操作したりする光景を見たことがあると思います。オフィスでも同じ光景を目にしました。そうした細かな点を「皆のパフォーマンスが20%上がれば、売上も20%伸びる。すると、給料も20%上がる」と言い続け、社員皆が同じ目的意識を持ち、進める組織を目指しています。



タイ人の指導は日本人とは違いますか
それが周りの人から聞くほどの違いはなく、大阪と北海道の違いくらいではないでしょうか。納得すれば素直に聞いてくれる印象ですね。逆に日本ではメンタルヘルスやパワハラなどと、指導がかなり難しいですからね。



何か秘訣はありますか
組織を変えるのに重要なのは空気感。選挙の風のようなものです。支持率が50%を超えるまでは我慢、我慢。支持率が50%を超えたところで一気に改革に向かうという感じですね。これは日本でもタイでも同じです。



決定権者の重みはありますか
財務会計をきちんと把握しなければ、社員の給与も払えません。責任重大ですよ。他の駐在員の皆さんが、「最初の1年は、あっという間だよ」と言われますが、私にとっては、長く感じられましたね。赴任して1年半、ブレずに信じるままに進んだことがようやく結果として、現れ始めました。



タイの生活はどうですか
もともとタイ料理は好きなので、屋台やフードコートも行きますよ。ゴルフは、最近また始めました。 休みの日は、身体を鍛えるために、ジムで運動しています。土日のどちらかはプロモーションイベントが入るので、店舗を回っています。


 

編集後記
高級化粧品に強みを持つコーセー。タイ進出は30年と古く、タイ人女性の憧れのブランドのひとつ。男性にとって化粧品は遠い存在と思いきや、最近は女性だけのものではなく、販売実績では男性化粧品が最も高い成長率だという。美容大国タイは、男女ともに美への意識は高い。同社にとって、拡大する中間層はそのまま市場拡大へとつながる。売上を上げるには店舗拡大が常套手段だが、「富裕層を掴む」と、新しい販売スタイルの確立を目指す山本MDの手腕に期待したい。(北川 宏)

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