サイアム オカムラ インターナショナル

時代のニーズに応えられる準備は整っている

代表取締役 井戸 哲也

《プロフィール》 1968年生まれ。神奈川県川崎市出身。91年日本大学生産工学部建築工学科卒業。岡村製作所入社。首都圏勤務、デザイナーとして環境に関わる提案業務に携わる。2002年同社シンガポール現地法人、12年6月より現職 日本でオフィス家具最大手の岡村製作所。来年、タイ本格進出から20年を迎える。同地ではサイアム・オカムラとして、オフィス家具の製造・販売のみならず、空間デザイン、小売店の什器(商品陳列)などあらゆる施設の空間活用をコンサルティングする。現法トップの井戸哲也氏にインタビューした。(2015年7月現在)
 

本格進出20周年を迎え、組織改編、新事業への挑戦が役務です

—タイ進出について オカムラグループとして、タイ進出は1988年に生産工場を建設したのがはじまりです。その後、96年に販売会社を設立し、タイ本格進出を果たしました。来年で、本格進出20周年を迎えます。



—タイでは、日本とは違った事業展開をしているそうですね
進出(工場設置)当初は、スチール製品がメインで、オフィス向けデスク、キャビネット、ロッカーなどを日系企業に販売していました。その後、椅子、応接用ソファ、会議用テーブルなどラインナップを増やし、オフィスに必要なあらゆる製品を揃えていきました。そして、日系企業の進出増にともない「オフィス家具以外にも内装工事はできないだろうか」とのニーズが高まり、しだいにオフィス家具の納入以外に、内装設計・工事・電気設備といったワンストップ・ソリューションを確立し、提供するようになりました。一方で、生産工場を持つことで、大量受注に対応できる強みを生かし、スーパーマーケットやコンビニエンスストアといった「ストア環境事業」にも参入。大型のショッピングモールに設置する商品陳列什器(通称:ゴンドラ)の大型受注を請け負うまでに至っています。

—取引企業は日系以外からも?
おかげさまで、タイでスーパーを展開する日系小売企業から、タイの財閥企業であるチャロン・ポカパン(CP)グループやセントラルグループといった大手小売企業とも取引させていただいています。最近では、BTSプロンポン駅直結のエムクオーティエにも納入しました。高級スーパーへの納品は、目標でもあったので、達成感はひとしお。一見、地味な製品ですが、つや消し塗装と曲線を利用したデザインが、照明効果により、陳列商品を浮き立たせるという工夫(演出効果)を施しているんです。ストア向け製品は、お店にとって主役ではなく、ツールに過ぎませんし、デザイン性を求められることも多くはありません。

とはいえ、工夫ひとつで、そのお店が目指す方向性の一助にもなると自負しています。中進国として成長したタイのニーズも、コスト重視の傾向から「品質重視」へと優先順位が入れ替わりつつあります。つまりは安かろう悪かろうの時代から変化しているということです。弊社の社是に「良い品は結局おトクです」とあり、時代のニーズに応えられるだけの準備は整っています。

—ショールームがオープンしたと聞きました
この7月、バンコクにあるクリスタルデザインセンターというモダンなインテリアモール内にオフィス兼ショールームを設置しました。このモールは、富裕層やインテリアデザイナーなどが集うエリアでもあり、弊社のデザイン性に優れた商品が、どう受け入れられるか実験的な意味合いもあります。現在は、前述したオフィス事業とストア事業の二本柱が主軸ですが、今後はあらゆる可能性に対してチャレンジしていこうと思います。ショールームはその第一弾と言えるでしょう。また日本同様、将来タイでも少子高齢化が懸念されますので病院施設への製品提案もしていきたいですね。

—ストア事業の伸びしろは大きいですね
仰るとおりです。先日、日系大手コンビニも大規模な出店計画を発表しましたし、日系ドラッグストアも展開を加速しています。将来的には、弊社の得意分野でもある冷凍・冷蔵陳列什器をタイでも展開する可能性もあります。通常の什器と違って、電気を使用するため、設置して終わりではなく、定期メンテナンスも必要のため、先ずは人材投入からですね。

—海外畑と伺いました
海外は、前赴任先のシンガポールを入れて通算14年目です。入社時はデザイナー職でした。シンガポール時代は、当初8人だったスタッフが、駐在中に25人まで増え、事業規模の拡大・成長を肌で実感するという貴重な経験をさせてもらいました。タイは、すでに100人規模ですが、将来のさらなる飛躍と現地化に向け、改めて組織再編を実施しています。まずは、評価制度を変え、あらゆる面でスタッフの仕事の成果を“見える化”することで、「頑張れば評価される」という気概とやりがいを伝え、成長を促しています。

—タイはいかがですか
ビジネスチャンスが転がっている有望市場であることは間違いありません。これほど、エキサイティングで刺激のある場所は、世界に類を見ないのではないでしょうか。海外赴任が長く、プライベートでの付き合いも国際色豊かになりました。頻繁に、海外の友人・知人がタイを訪れ、有益な情報交換ができています。ひとえに、チャンスを与えてくれた自社には“感謝”しかありません。


 

編集後記

「オフィス家具以外にもストア向け陳列什器に力を注いでいる」。“什器”という耳慣れない言葉に、いささか戸惑ったが、すぐに展望を理解した。昨今、タイでは、多店舗展開するショッピングモールやコンビニの出店ラッシュが続く。自社工場を持つ同社にとって、急な大量発注といったニーズへの対応はお手の物。今後も市場が拡大することは明らかで、同氏が言う「人材が先」とは、裏を返せば、設備やノウハウといった“布石は打ってきた。ヒトさえ揃えば対応できる”という自負の表れか。(北川 宏)

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