日本主導により年内発効も。タイの立ち位置は…
プラユット暫定首相は4月24日、タイがTPP(環太平洋経済連携協定)に参加する意向を示した。ソムキッド副首相は「TPP参加は、我々にとって多くのメリットがある。準備のため、次官事務局や関連局で早急に話し合いを行う必要がある」とコメント。自由貿易による市場拡大が、タイへの直接投資を呼び込むとの見方もあるようだ。
TPPは現在、日本、カナダ、チリ、ペルー、メキシコ、豪州、ニュージーランド、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ベトナムの11カ国で、年内発効を視野に入れた協定締結のための手続きを進行中。タイは発効後の加盟予定だという。
そんな時に飛び出したのが、トランプ米大統領のTPP復帰発言だ。遡ること2年前。TPPには米国も参加を表明し、12カ国で手続きが進められていた。しかし、トランプ氏が大統領に就任した後に離脱。自国に有利な2国間協定を強く訴えかけた。しかし、11カ国はその声に耳を貸さず。日本のリーダーシップにより、11カ国間での協定締結(TPP11)に向けて準備を進めてきたのだ。
さて、当時のタイはというと、TPPへの参加を検討していたものの、米国主導で決められた規定にデメリットが多く、また知的財産保護に対する評価が一定水準に達しておらず、参加を見送っていた。
ところが米国離脱後、日本主導による規定見直しでデメリットが解消。知的財産保護の問題も、取り締まり強化により昨年、優先監視国から“監視対象国”に改善された(米国・通商代表部USTRから発表される『スペシャル301条報告書』より)。こうした状況の変化により、今回の表明に至ったのだ。
日本側は、米国の復帰を望むものの、今の規定は頑として崩さない姿勢だ。ソムキッド副首相は「米国が復帰しても、タイのTPP参加は変わらない」と言及する。いずれにせよ、米国の“サプライズ”はいつ起こるかわからない。逃げるが勝ち……ではないが、いつまでも振り回されるわけにはいかないだろう。