不景気による生活費高騰、借金まみれの生活が問題に
打開策として叫ばれる給料のベースアップは実施なるか……
長らく続く不景気により、一日最低賃金300バーツが引き上げられるかもしれない。
毎年5月1日はメーデー。今年、王宮前広場では多くの労働者が集まり、タイ自動車労働組合のマーニット・プロッムガーリーグン委員長が、一日の最低賃金を現行の300バーツから360バーツへの引き上げ、社会保険の充実など、雇用条件の改善を求める11の項目を訴えた。
タイ商工会議所が発表した2015年のタイの労働者の調査結果では、困窮ぶりが明らかとなった。月1万5000バーツ以下の収入、1197人の労働者を対象に行ったアンケートでは、94.1%が何らかの借金を抱え、家計債務の平均は約11万8000バーツ。前年比で実に10.9%増。借金に充てる内訳の31%が生活費、15.3%が家賃、そして19.8%が借金返済という、いわば火の車状態なのだ。
借入先として、ヤミ金業者の存在も見逃せない。ロイターによれば、銀行は不良債権の増加にともない、貸し出し基準を厳格化し、結果的に多くの国民はヤミ金業者に頼らざるを得ない状況に追い込まれている。月10%の金利でも、借り手は山のようにいるという。81.8%が借金返済で悩んでいることもわかった。
いまだ抜け出せない不況、生活費の高騰が、前述した最低賃金の引き上げの背景となっている。
同要求に対して、プラユット暫定首相は「すぐに実施できることは対応するが、時間が必要。しかし、最低賃金については今は約束できない。景気の回復が遅れている中で、来年にはタイで2000ヵ所の工場が建設予定であり、今はタイ人の完全雇用を目指している」と論点をすり替え、企業を逼迫させる賃金上昇に慎重な姿勢をみせた。ただし、ヤミ金業者の問題については「すでに対策を講じている」とし、一方で国民に安易な借金を止めるよう呼びかけている。
景気の復活が叫ばれる中、家計債務は既に消費の重しとなって、悪循環がすでに起こっているのも事実。暫定首相は賃金引き上げが時期尚早としているが、もし上がることになれば、日系企業にも大きな影響を及ぼし、外資流入の減少は免れない。政府にとっても、国民にとってもしばらく厳しい状況が続きそうだ。