公立中学校の入試が運で決まってしまうなんてホント!?
徴兵に続き、人生を左右するくじ引きの実情を紹介する。
タイの一部徴兵が“くじ引き”によって決まると紹介したが、実は公立中学校の入試でも、くじ引きによる合否判定が行われている。
義務教育にも関わらず、そもそも試験が必要な理由は、人気校に学生が集中するため。タイでは、学区外でも簡単に試験が受けられるので、自ずと有名校に生徒が集まる。
公立中学校の入学方法は、二通りあり、一つが通常の「入学試験」、そしてもう一つが前述した「くじ引き」である。
1990年に採用された同システムは、元々学力の差を埋めるため、多くの学校で採り入れられた。くじ引き入試は、通常の入学試験後に行われるので、テストによって合格できなかった生徒へのいわゆる“敗者復活戦”。
ただ、実際にはくじ引き入試を行う学校は減少傾向で、今年入試が実施されたのは、全国で22校。バンコク都内では、わずか10校のみだった。
基礎教育委員会事務局によれば、同システムを2016年に廃止する計画もあるという。背景にあるのは、少子高齢化の問題。ほとんどの学校が定員オーバーにはならないため、そもそも実施する必要がない。今年くじ引き入試を行ったとある学校では、定員102人に対して、実施者は92人で、定員割れとなった。
もう一つの理由としては、生徒の“心に残る傷”である。当選した生徒が喜びを全力で表現する一方、外れた生徒はその場で涙を流すケースも多い。「人生がくじ引きで決まってしまうのであれば、勉強なんてしなくていいのでは?」と考える生徒が増加する可能性も指摘されている。
くじ引き入試の廃止については、多くの親が賛成した。テストのみの受験であれば、今まで以上に勉学に励んでくれると期待しているからである。
いずれにせよ、日本よりもはるかに“ギャンブル”に対して厳しい国であるのに、徴兵のみならず、入試という人生の節目を運で決めるというのには、いささか違和感を感じずにはいられない。“お金がかかっていなければ”という条件付きなら、人生も運に任せていいということなのだろうか。