タイの刑事裁判に潜入! (後編)〜”トンロー強盗事件”の初公判

タイ刑事裁判のお決まりのセリフ、
「このなかに犯人はいますか?」「はい、います」を体験

先週のおさらい(前半はこちらから>)。窃盗団を捕まえた“お手柄日本人”不在の初公判がはじまった。事件当時、通訳として日本人に付き添った(被害者の)同僚女性が、裁判官から事細かく当時の状況を聞かれていく。その間、30分ほど。ほどなくして、裁判官は最後の質問だろうか、証人に対し、「犯人は後ろの席にいますか?」と聞く。すると証人は後ろを振り返り、犯人に向けて一言。「います。あの人たちです」。

次に喚問されたのは、トンロー警察署の警察官。一変したのは、女性検察官の態度で、証人に優しく語りかけていた口調は、なぜか警察官に対しては、高圧的となった。女性裁判官はあいも変わらず細い声で、淡々と質問を繰り返す。

変わった出来事といえば、公判途中、裁判官が、傍聴席に向かって「このなかに英語が得意な方はいませんか?」と尋ね、手を挙げた傍聴人に対し、「では、◯◯号法廷に行って、通訳をお願いします」と突然の依頼。まさに、「機内に急病人がいます。このなかに医師はいませんか?」だ。

さて、ひとしきり続いた警察官への質問もラスト。再び「このなかに〜」である。当然、「います」とのお決まりのセリフで締めくくる。これにて、約1時間強に渡って開かれた公判は幕を閉じた。ちなみに、傍聴人は、トイレを理由に出入りは自由。その際、犯人の目の前を通らなければならず、少しばかり緊張する。

終了後、証人として出廷した同僚女性には、交通費として500バーツが手渡されていた。ちょうど、先ほど英語通訳者として、別の法廷の手伝いに行った傍聴人も戻ってきた。すると、裁判所から、駄賃として200バーツをもらっていた。

検察官に、決めゼリフについて質問すると「本来は、被害者が行う行為で、当事者(日本人被害者)が、この場にいれば、皆が出廷する必要もなかったし、数分で裁判は終わったよ」とのこと。余罪もあり、判決は後日。稀有な裁判が傍聴できた。ただ、裁判に携わらざるをえなかった通訳や警察にとっては、お手柄ではなく“お騒がせ”日本人として印象に残っているであろう。

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