三寒四温? タイを訪れた冬将軍。
「50年ぶり~」とも言われた記録的寒さが残した爪あと
〝とにかく寒かった〞と思い返すほど先週は冷え込んだ。日本列島では10年に一度の記録的大寒波に襲われ、奄美大島では115年ぶりに雪が降った。そんなニュースを見ていた矢先、熱帯のタイにも寒波が押し寄せた。タイ全土を覆った寒気団の影響で、24日夜から気温が下がったタイ北部の平野部では、25日早朝には10度を下回る6度を記録。バンコクでも15度まで下がり、一時は「50年ぶりの大寒波」との情報も飛び交う。ところが、冷静な気象局(1951年からの統計)によれば、2014年1月24日に西部ターク県で4・7度、遡ること1974年1月2日には北部ナーン県で1度を記録しているという。
とはいえ、チェンライ県の山間部ではマイナス3度まで下がり、「タイにも雪が降るのでは」と期待の声も上がったが、残念ながら公式に降ったという報告や記録はなかった。タイ国家災害警報センターのスミス所長は「雪が降るには、地表温度が0度まで下がる必要がある。ただし、今回の寒波がたびたび起きれば可能性はある」と話した。
タイの大寒波は悲しい爪あとも残した。内務省災害防止軽減局によれば、この寒さの影響で、少なくとも21人が死亡。東北部ブンカーン県では4人が亡くなった。多くが高齢者で、急な寒さによる持病の悪化や飲酒時のカラダの冷えが原因とされた。
一方、寒気団による影響は寒さだけではない。空に強い寒気があると、地上付近の暖かい湿った空気が上昇し、積雲や積乱雲が発生しやすい。タイ南部では、大雨が降り、波の高さが最大4mの大しけとなったナコーンシータマラート県では、県内のパークパナン市とフアサイ市を結ぶ国道16号に海水が入り通行止めとなった。また、チュムポーン県ランスワン市の沿岸部の250戸が高波被害を受け、ナラーティワート県ムアン市の125戸の住民らが避難。ただ、今回の寒気による乾季の大雨は、思わぬ好影響ももたらした。灌漑局のステープ局長は「貯水率が下がり、水不足が心配されていたが、今回の大雨で国内主要ダムの水位が多少戻り、6月頃までは大丈夫だろう」と安堵した。
ちなみに、27日以降は寒気団も弱まり、熱帯のタイに逆戻り。束の間の冬気分となった。