日本のマンガ雑誌の先駆けが20年の歴史に終止符。
その理由は電子書籍の台頭ではなく、著作権違反だった
7月21日、タイで初めて日本のマンガを掲載した雑誌「ビバフライデー」が、27日発売号をもって休刊となることが決定した。編集に携わるピトゥーン・ティラパタナパン氏はテレビに出演し、休刊の理由を説明。無料のサイトでマンガを読む人が増えたことにより、誌面の売上が落ち込み、約20年間続いた歴史にピリオドを打たざるをえなかったという。
しかし、読者の多くは、同誌の出版サイクルが、日本での発売時期と比べて、格段に遅いのが原因だと指摘。ときに1年遅れのものもあれば、途中で掲載中止といったことも少なくなかった。同社は版権の獲得には熱心だったが、出版までに時間がかかりすぎるという問題を抱え、インターネット全盛の時代で明らかに出遅れていた。
言わずもがな、タイでのテクノロジーの進歩は目覚ましい。いたるところでWi—Fiが利用可能で、タブレットやスマートフォンの普及台数は増加傾向。進歩とともに非合法なツールが出てくるのも、避けられないことだった。
試しに無料でマンガを閲覧できるというサイトをチェックしたところ、丁寧にA〜Zまでのタイトル別で並べられ、その数も膨大。クリックすると、タイ語に変換されたマンガのページが丸々と掲載されていた。
同社は、誌面の廃刊を決めた一方で、今後はオンラインマンガ「E-Comics」に注力していくと発表。テストしたアプリでは、1タイトル35〜40バーツとし、コスト安も実現する。目標は、3年以内に300タイトル以上の電子化で、売れ行きのよいタイトルは印刷して販売し、これまでと真逆のアプローチで市場投入を図っていく。
これに対し、マンガ雑誌「Let’s Comic」で編集長を務めるタンヤラック氏は「電子書籍で売上を上げるのは簡単ではない」と地元紙マネジャーのインタビューで話している。同氏は「無料で読めるのであれば、わざわざお金を払って読む人はいない」と根本的な問題にも触れた。
日本の電子書籍市場において、売上の7〜8割を占めているのがマンガである。マンガと電子書籍の相性はいいとされているものの、タイで最も問題なのは、発売時期が遅いことなどではない。著作権侵害であるのは、火を見るより明らかだろう。