タイの風物詩ともいえる野良犬が街から消える?
国や大手企業が狂犬病などの対策を打ち出している
日頃からお世話になるコンビニ“セブンイレブン”。ふと気づけば、入口付近にはいつも犬(野良)が寝そべっている。最近、タイのSNSやテレビ番組では「セブン犬」として紹介され、話題になっているという。しかも、同社は利用客に害が及ばぬよう狂犬病の予防接種やノミの駆除など、至れり尽くせり。
ちなみに、セブンイレブンを運営する「CPオール」によると、全国約7965店舗(2014年9月現在)で確認されたセブン犬は1000匹以上で、今後も保護活動を続けていくという。
とはいえ、タイを歩けばセブン犬以外にも多くの野良犬がいるのも事実。噛まれて伝染る狂犬病は、冗談では済ませられない深刻な病気として有名だ。
タイ国家統計局の調査によると、バンコク都内で確認された犬の数は69万9847匹(2010年)。うち、飼い主のいない野良犬は10万2490匹で、その数は、年々増加傾向にある。日本における2010年の捕獲数4万9265匹(NPO法人地球生物会議ALIVE 全国動物行政アンケート結果)と比較しても、2倍以上となっている。
タイも日本の野良犬事情と同様に、本来ペットとして飼われていた犬が、成長や病気などを理由に飼い主のご都合主義で捨てられるケースが多く、寺院や大学などに捨てにいく無責任な飼い主が後を絶たない。
しかも、タイには仏教五戒の一つ「生き物を殺してはいけない」という教えを守り、日本のように保健所で殺処分とはいかない模様。過去、タイで狂犬病によって亡くなった人は、2005年から13年で約130人。その数は、1950年代から年間平均1〜2人で推移している日本と比べると歴然だ。
最近では、国や行政も増えすぎた野良犬に重い腰を上げ、対策を打ち始めている。現在、バンコクのプラウェート区にある「野良犬管理センター」では、保護した野良犬に狂犬病ワクチンを注射し、その後、ウタイタニー県の同センター施設で、飼い主が見つかるまで、しつけなどの訓練を受けさせている。ただし、そうした施設も多くはなく、野良犬の姿が消えることはない。尻尾を振って寄ってくるかわいらしい犬も、安易には触らない方が賢明だろう。