鉄道整備(複線化)覚書締結、投資約束、新幹線試乗、
プラユット暫定首相がホクホク顔でご帰国
プラユット暫定首相が2月10日、3日間(8〜10日)の訪日を終え、帰国した。政府専用機でバンコク空軍基地に降り立った同暫定首相は開口一番、「今回の訪日は満足した」とご満悦の様子。
それもそのはず、プラユット暫定首相にとっては、就任後初の訪日だが、タイにとって、ほぼほぼ思惑通りの展開となったからだ。
2月9日の安倍晋三首相との首脳会談では、日本側から早期総選挙の実現による「民生復帰」と「新幹線」の売り込み、原発事故後にタイが実施している日本産食品の輸入規制の撤廃が求められた。それに対し、プラユット暫定首相は「総選挙は年末から来年初め」と回答した上で、タイの鉄道整備計画や難航するダウェー経済特区への経済協力を求め、鉄道整備(3路線の複線化)に関して覚書締結にこぎ着けた。
同日は、経団連の榊原定征会長とも会談。ここでも、日本製品の関税削減や投資環境の整備、日本製鉄鋼の無税輸入枠削減の見直しなどをちらつかせ、さらなる日本企業の投資促進を求めた。ジェトロの石毛博行理事長とは、自動車産業における、さまざまな条件緩和について話し合った。また、北山禎介三井住友銀行会長と面会し、次回は日本側が訪タイし、金融面での意見交換を約束。その後は、日本自動車工業会の池史彦会長(ホンダ会長)、飯島彰巳三井物産社長、益子修三菱自動車会長、國分文也丸紅社長らと会談し、EV(電気自動車)工場の建設話にも及んだという。
2月10日、前日の過密会談で、各方面から支援・協力を引き出し、ホクホク顔のプラユット暫定首相。この日は夫妻で、新幹線に試乗し、降車後、「タイでも導入したいが、日本のサポート次第」と述べた。
今回の訪日について、タイ人ジャーナリストは、「主導権はタイ側にあった。将来の日本製新幹線を売り込むには、うまみの少ない(複線化)鉄道整備事業の協力もやむを得ない」と分析する。
一方、プラユット暫定首相は12日、「バンコク—パタヤ間、バンコク—ホアヒン間で高速鉄道計画を、日本の新幹線のように民間企業に任せる」と高速鉄道計画を発表した。訪日後の日本に対する一定の配慮かもしれないが、日本側が受注できるという確証はない。
【写真上】写真提供:Royal Thai Government