軍主導で秩序回復を図るというが、国際社会からは非難の声も
ついにクーデターが宣言された。半年間にわたって続いた政治的混乱を解決する方法は、やはりこの一手だったかと言わざるをえない。
反政府デモ活動が始まった当初は、中立の立場をとるとしてきたプラユット陸軍司令官も、さすがに我慢の限界だったのだろうか。今年1月にクーデターの可能性を問われたときには否定もせず、「今は答えられない」とだけコメント。そして22日には、「多数の死者を出している現在の状況を早急に回復させ、政治・経済・社会を改革するために、軍と国家警察は協力して政府機能の全権限を掌握する必要がある」と発表した。
新首相が決まるまではプラユット司令官が首相職を代行し、07年の憲法は停止される。ただ上院議会、裁判所、独立機関は機能するという。
今後は、陸・海・空軍および警察のトップが分担し、省庁の業務を統括する。23日の軍とインラック前首相の会談後、プラユット司令官はコメ問題を早急に解決すると発表した。
そして、次の争点となるのが選挙制度改革案だろう。無論、改革なしで選挙が行われれば、タイ貢献党が勝つのは目に見えており、それではこれまでと変わらず堂々巡りとなる。タイ貢献党関係者によると、タクシン元首相は軍に対して、シナワット家に政治から手を引かせたいなら、恩赦(タクシン元首相の帰国許可など)を検討すべきだと条件を出したという。
今回の事態を受けて、日本外務省は、「プラユット陸軍司令官を中心とする国家平和秩序維持評議会が国家の全権を掌握する事態が発生したことは遺憾である」と厳しく批判。アメリカ国務省ケリー長官は、正当性は認められない、と失望の意を表した。 国連のパン・ギムン事務総長も、「迅速な憲法と文民による民主制の回復、関係者全員の対話が、タイの長期的平和と繁栄の道を開く」とコメント。欧州連合(EU)は、対話による平和的解決を呼びかけている。
国際社会からの信用も損なっている今、新軍事政権はどう動くのか。迅速な解決が求められる。