タイ進出55周年世界ブランド“日野”を
もっと愛してもらいたい
代表取締役社長 中村 伸
《プロフィール》
なかむら しん
■1961年生まれ。東京都出身。日本大学理工学部卒業。1983年入社、現在に至る
■趣味:ゴルフ、時計
■尊敬する人物:大橋巨泉
■バンコクの行きつけの店:日本亭、オーブ(カラオケ)
■愛用の腕時計:ロレックス デイデイト、ターノグラフ、デイトナ、GMTマスターⅡ、コルム アドミラルズカップ
■愛用の鞄:TUMI
■休日の過ごし方:ゴルフ
■社用車または愛車:レクサス LS460
今年は、タイ法人設立55周年と伺いました
1962年の設立で、今年は節目の年となります。特別仕様車や記念式典を予定していますよ。歴史はありますが、意外にトヨタグループであることが知られていないんです。グループ内では商用車(バス・トラック)を任されている会社と認識してもらえるとうれしいですね。
他にも、タイにおいてはバンコク大量輸送公団(BMTA)が運営する路線バス約800台のメンテナンスも担っています。社員約500人のうちの半分ほどは、同バス事業に携わっています。おかげさまで、弊社のバスは頑丈といいますか、バンコク都内を走行するバスを見ればわかりますが、老朽化は進んでいるものの現役で走り続けているバスが多いです。整備を請け負ってから、かれこれ40年が経ちました。耐久性も然ることながら、日々の整備の賜物かもしれません。
タイ政府はEV(電気)バスの導入を検討しているようです
しかしながら、古いバスはすでに製造していない部品もあり、都度、必要な部品を作ることもあり、整備費用は増えています。近い将来、新しいバスへの入れ替えは必要でしょう。
現状、中国が自国製のEVバスの営業が強いですが、導入するには、電気をチャージするチャージステーションの設備が必要ですし、何より1台の価格が高いので莫大な初期投資がかかります。その点、日野のハイブリッドバスであれば、ディーゼルと電気の併用ですから、走行中に自動的に蓄電でき、例え、電気部分が壊れても走行できるので商用車としては向いているでしょう。
先日、プラユット暫定首相にもお会いし、日野のハイブリッドバスがいかに優れているかや、メリットを直接伝えることができました。新しい日の丸バスが、バンコク都内を走る姿を期待してください。
ASEAN経済共同体(AEC)発足で、物流増が期待されています
ご存知の通り、AECの発足で製造業の隣国への分業をはじめ、色々な動きが出てきています。特にタイとベトナム・ハノイやダナンを結ぶ東西回廊での物流が増えてきていると聞いているので、一度、視察してみようと考えています。日野のトラックがどういった道を走るかを確認することも重要ですから。また、今後の需要増への準備としては、現在タイに91拠点あるディーラー数を、100まで増やす計画です。
小型トラック部門に参入し、新型も続々と投入していますね
日本では、“トントントントン日野の2トン”(TVCM)のフレーズで浸透し、おかげさまで弱かった小型トラック部門も本格参入から十数年で、3割近くまで確保できるようになりました。
また、2015年には12年ぶりのフルモデルチェンジとなった中型トラック“VICTOR”を、昨年7月には“SPLENDOR”を投入しました。さらに、ニッポンが誇る世界的な計装機器メーカー「YAZAKI」と共同開発したGPSとデジタルタコグラフの一体型運行管理システム“iQsan”(いっきゅうさん)もリリースしています。これは、大・中型車両に標準装備するほか、乗用車を含め他社メーカーにも装着できるいわば、世界標準規格です。事故リスク低減や燃費向上につながる運行管理に役立つとの思いもあり規格を標準化させました。
一方、ライバル社は今年新型投入を予定しているので、現行モデルの値下げキャンペーンで、日野は苦戦しているんです。それでも、タイ日野は「日野を愛していただく」を社是に掲げ、ドライバーの技術向上プログラムや定期メンテナンスに加え、経年劣化した車のエンジンを蘇らせるサービスなど、多様な独自アフターサービスを展開し続けることで、地道に信頼を積み重ねていく努力をしております。
タイにご縁があると聞きました
実は、タイ日野販売の草創期であるタイ単独資本時代を経て、3代目(プロパーとしては初代)現地法人トップが父でした。その際、家族でタイに住んでいたので、日本人学校にも通っています。そして、数十年の時を経て、12代社長に就任したこともあり、極めて縁深い国であると感じています。
昨年末には、ラマ10世が即位され、タイ王国は新時代を迎えました。今年はタイ進出、55周年という節目でもあり、これからも同国発展への貢献を念頭に事業展開を進めていきます。
編集後記
日本人ならば、“トントントントン日野の2トン”のフレーズを知らない人は少ないだろう。だからこそ、小型トラックの参入後発組だとは気づかなかったし、タイの地を走る公共バスを40年に渡って支えてきた事実も初めて知った。タイ人の日常を支える大切な役割を、日本の企業が担っていることに誇りを覚える。お父上が日野プロパーとしての初代現地法人社長という因縁にはいささか驚いた。タイに対する中村家の使命を感じざるを得ない(北)。