まだまだ期待値は未知数。まずはお手並み拝見のタイ政財界
ご存知の通り、11月8日に投開票された米大統領選挙で、共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏(70)が大接戦の末、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(69)を破り当選。衝撃の余波は、世界の金融市場で「トランプ・ショック」として駆け巡った。
タイにとって米国は、中国、日本に次ぐ第3位の貿易相手国だけに、就任後の貿易政策の行方によっては、影響が出る可能性もある。選挙前、米国や日本を含め各国のメディアはこぞってヒラリー優勢を報じ、タイでも多くの政財界人が「ヒラリーであれば、さほど影響はないだろう」と楽観視していた。
ただ、フタを開けてみれば、大方の予想に反し、不動産王のトランプ氏が制して決着。“ヒラリー安堵感”は一夜にして一転した。
タイの宰相プラユット氏は「勝った方におめでとうと言いたい。タイとアメリカの関係は約200年続いている。誰が大統領になろうともタイは変わらず、粛々と自らの政策を進めるだけだ」と意に介さず。経済担当のソムキット副首相は「今後のアメリカの経済政策を注視する」と短くコメントした。
タイの要人発言は以下のとおり。
イッサラ・タイ商工会議所会頭「トランプ氏は自国利益を再優先に考える持ち主。他国との関係悪化もあるかもしれない」、ワロータイ財務省財政経済局副局長「仮にトランプ氏が中国とベトナム向けの経済政策を厳しいものにすれば、タイにも影響を及ぼすだろう」、プラパット・タマサート大学ASEAN研究所所長「トランプ氏は、乱暴な公約が多く、ASEAN市場をもっと研究してから政策を打つべきだ」、TMB銀行経済分析研究所「直接的な影響はないが、中国を経由して、電気製品、化学製品、電子部品など、輸出面で間接的に影響を受ける」、タイ中央銀行「タイ経済は何度も経済変動をくぐり抜けてきた。ただ、今回はそれほど大きな問題ではない」と、現状では政策や陣営など不明瞭な点も多いことから、今後の動向を注視するとした。
日本にとって、一にも二にも“アメリカ様”なのは至極当然だが、タイからすると三にも四といった感覚か。どの国もしばらくはトランプ氏の政治手腕を“お手並み拝見”。暗中模索する日が続くだろう。