トラ違法売買を疑われる寺

名物観光地のタイガーテンプルで判明した疑惑の数々に世界中が注目

 

カンチャナブリー県のスア寺院(タイガーテンプル)から137頭のトラが移送されたのは、既報だが、同寺院の疑惑が次々と明るみになってきた。ことの発端は、1999年にまで遡る。当時、近隣住民がトラ4頭を預けたところ、国立公園・野生動物・植物局は絶滅種の飼育は違法にあたると判断したが、受け入れ先もなく、そのまま放置したという。その後、同寺院は、2007年に18頭、10年には70頭、15年には147頭と数を増やし、テーマパークとして運営を開始。入場料一人600バーツで、トラと触れ合えることが人気を呼び、名物観光地となった。
15年3月、同局が調査に乗り出すと、マイクロチップをつけた3頭のトラが失踪していたことが判明。16年1月には、ナショナルジオグラフィック誌に「スア寺院の闇」と題したレポートが掲載され、取材をしていたオーストラリア人女性は15年までに281頭の存在を確認していたものの、16年間で147頭に減少していたことを疑問視していた。
そして2月。3頭のトラの捜索が始まると、同局は鳥類やシカ、ツキノワグマなどさまざまな動物を発見し、6頭のクマを保護。同時に137頭のトラの移送を進めながら、ホルマリン漬けにされた生後間もないトラ40頭やトラの皮を使ったお守りもみつかった。ちなみにトラは中国では「高価な薬」として、闇市場で高値で取り引きされ、1頭150万バーツ、革は20万バーツになるという。さらに同寺院は違法で土地を所有していたこともわかり、本来396ライの申請に対して、1419ライもの広大な土地を無許可で使っていた。
現在、警察はプラ・アーチャーンプーシット住職を追及する構えだが、先日弟子が会見を開き、「ホルマリン漬けは獣医が勝手にやったこと。お守りを作った人物も寺とは関係ない。同局が寺からトラを移送したことは“盗み”と同じ」と容疑を真っ向から否定。同局のニポン局長は、トラの飼育代の高さに言及しながらも、受け入れ先を協議していくという。
気がつけば世界中が注目する結果となった一件。動物愛護は先進国につきまとう問題であり、今も世界のどこかで議論されているが、“成熟した”政府として、タイも慎重な対応が求められる。

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