価値は2年で20倍以上。熱狂する市民、焦る政府
世界で一大ムーブメントを巻き起こしている仮想通貨「ビットコイン」。2017年11月末にはドル建て価格1万ドルを超え、さらに数週間で2倍近くの値が付く高騰ぶりで、昨年末は日本でも大きく報道された。タイも例外ではない。昨年の取引額は1日1億バーツとも予測され、2年前の3倍にまで膨らんだとも言われている。
そんな中、証券会社のフィリップ・タイランドが8日、タイで初となるビットコイン・フューチャーの販売を開始し話題となった。米大手シカゴ・オプション取引所、シカゴ・マーカンタイル取引所を通じての先物取引となる。
タイでブームの兆しが見え始めたのは、意外にも早く2013年から。しかし当時のタイ中央銀行は、外国為替取引として登録申請した販売会社に対し「外国紙幣の売買と認められず、登録は不可」と却下。プラサーン総裁(当時)は、ビットコインの流通に「変動が激しく予測不能。バーツ投機のために使われる恐れがあり、歓迎はできない」と難色を示していた。しかし同行が信頼性の低さを理由に通貨として認めなかった事実とは裏腹に、多くの市民が個人のリスクのもと取引を行うようになっていた。
取引が拡大すれば、バーツの流出に加え、詐欺やマネーロンダリングの温床になる可能性も危ぶまれる。経済担当のソムキット副首相は新暗号通貨の動向をつかむよう同行へ要請したが、流通量や保有者が把握できず“実体”調査は難航を極めている。
アピサック財務相は、「ビットコイン取引は、ギャンブルに興じるのと変わらない。法律的にも支払いの対価にはなり得ないので、より確実な商品に投資を行ってほしい」とコメントを出した。
世界中が興ずる熱狂的なマネーゲーム。実体のない通貨の争奪戦でも、夢から覚めれば強者と弱者に二分されることを、参加者たちはどれくらい感じているのだろうか。回復の兆しが見え始めたタイ経済に悪影響を及ぼさないことを祈りつつ、動向を見守りたい。