投資促進、観光需要の回復約束するも、肝心の戒厳令は敷いたまま
タイの全権を掌握する国家秩序維持評議会(NCPO)のプラユット議長(前陸軍司令官)を首相とする暫定内閣が発足。同暫定首相は12日、立法議会で所信表明演説を行った。
冒頭、同首相は「汚職のない公正な社会構築」を掲げ、汚職撲滅に向けた改革推進を誓った。すでにご承知の通り、NCPOは、5月22日のクーデター後から、タクシー業界、宝くじ販売、屋台営業に絡む利権グループの摘発に着手するなど、腐敗撲滅を目指す姿勢を示してきた。「特定な勢力への不正資金の流れをストップさせる意図もあるが、それ以上に、国民や諸外国に対し、汚職罪で国外逃亡中のタクシン元首相との違いを見せつけている」(タイ人ジャーナリスト)。今回の所信表明でも、タクシン派=前インラック政権との“違い”を前面に押し出す。
前政権は、コメ買取制度や学生へのタブレット配布、診療代を一律とする保険制度など、バラマキと揶揄されたポピュリズム政策に重点を置いたが、結果、多額な負債を抱えた。そこで、プラユット暫定首相は、表面的な政策を進めた、前政権との違いとして、前述の利権構造へのメスとともに、相続税や固定資産税の導入を柱とする税制改革など、抜本的な構造改革路線を打ち出した。
輸出依存型経済からの脱却には、内需向け投資が不可欠。同暫定首相はBOI(投資委員会)審査期間のスピードアップや、外国資本の投資回復を狙う。また、内需拡大の切り札として、バンコク都内の大量高速鉄道整備や都と郊外を結ぶ鉄道整備、スワンナプーム空港の第2期工事の早期着工、タイ湾やレムチャバン湾といった重要港の再整備など、景気の下支えとなる大型公共事業計画を並べる。その一方で、行政機構や公務員制度改革なども掲げ、“汚職撲滅”イメージの浸透に気を配る。
公明正大、大風呂敷を広げても、軍政を嫌う投資や観光需要の源泉である諸外国にとっては、歓迎すべき内容だ。できれば、投資や観光を躊躇させる理由の“戒厳令”を早々に解除してもらえたら、なおうれしい。