国王への敬意を示そうとボランティア活動をする人がいる一方で、
ボランティアが配布する食料などが新たな問題となっている
プミポン国王陛下の崩御から2週間。絶対的な存在である“国父”を失った深い悲しみの中、黒や白の服を着用し、喪に服すタイ人。一方で70年という長い在位期間だったからか、服喪について侃々諤々の議論が起きている。
現在、王宮で行われている弔慰記帳会に参列するためにバンコクを訪れる地方在住者の数は日を追うごとに増え、1日の平均4万人、週末には8万人が訪れている。そして、会場周辺ではボランティアの姿が多く見受けられるという。参列者への食事や飲み物などの配布やゴミ拾い、「無料送迎サービス」と書いた紙をバイクに貼り、無償で参列者を送り届ける人もいる。民間企業や政府機関も、参列のため地方から訪れるタイ人のために、王宮への送迎バスやテントを提供。
広場にいるボランティアたちの活動のきっかけは、他人を助けることによって国王に対する敬意を示す意味があるという。在りし日の国王が利他を貫き、国民の為に尽力された姿を重ね、善行に努めている。
このような素晴らしい活動が広がる一方で、別の問題も起きている。ボランティアによって配布される物の量が多くなればゴミの量も自ずと増える。バンコク首都圏庁によると追悼儀式の開始以降、王宮前広場で収集したゴミは1日平均66トン。14〜23日までの総量は594トンに上る。これに対して、バンコク都のチャッガパン副都知事は、首都圏庁のゴミ処理担当者1600人とボランティア3000人以上を王宮周囲10ヵ所に配置することを決定。さらに無料配布量を管理するため、ボランティアの登録を義務化するという。活動も会場のゴミ処理のため、20時までと定めた。ボランティアという自然発生的な行為が登録義務化されるというなんとも歯がゆい実情だが、それも仕方ないだろう。
タイ人俳優のパンジャン氏はSNSで、儀式に参加する人に向けてメッセージを投稿。「国王を思い参列する人がいる中で、無料配布を目当てに来る人や、SNSの“いいね!”を求めて参列する人もいる。そういった行為は失礼であり、見直すべきだ」。
国王の崩御を通して、タイでも服喪=身を慎む、という定義が見直されはじめている。