長谷場:前回、1997年7月2日からバーツが暴落していったという話をしました。
ミィ:「血塗れのバーツ」だと…。
長谷場:そうでしたね。どのくらい暴落したかというと、最終的には半年で1ドル50バーツにまでなってしまいました。でも、バーツが暴落したという事と併せて、問題だったのは「タイ企業がドルで沢山借金をしていた」ということなのです。
ミィ:どういうことですか?
長谷場:例えば、ミィさんが私から100ドルを借りてタイでビジネスをしているとしましょう。1年後に100ドルを返すと約束します。分かりやすいように利息は無しで。そうするとミィさんはタイでビジネスをする訳ですから、100ドルはタイバーツに変えてビジネスをします。借りた時、100ドルは2,450バーツでした。1年後には同じく2,450バーツを返せば100ドルを返すことになるハズ…でした。
ミィ:借りた時に100ドルは2,450バーツでしたからね。
長谷場:ところが、この間に1ドル50バーツになってしまっています。私は「100ドル返してください」と言いますよね。そうすると、ミィさんは何バーツを用意して両替所に行かないといけないですか?
ミィ:え? もしかして5,000バーツ? うそー! 倍じゃないですか!?
長谷場:そうなんです! なんと、タイ企業の借金が倍になってしまったんです。こうして、企業がバタバタと倒産しましたし、タイに進出していた日本企業も非常に苦しい状況に陥りました。今でも、バンコク市内にコンクリートの構造物だけが残って雨ざらしになっているところがありますが、この時に倒産してしまった会社の建設途中の建物がそのままになっている、というケースが多いです。
ミィ:確かに、そういう幽霊が出そうな落書きだらけの建物がありますね。
長谷場:この経済の落ち込みが以前見た実質経済成長率の大きな落ち込みなんです。
ミィ:おー。そこにつながるんですね!
長谷場:ちなみに、バーツを他人から借りてタイ政府のドルが無くなるまで売ったヘッジファンドですが、暴落した後のバーツを買って借りた人に返せば暴落した分が儲けになる、そういう仕組みで文字通りボロ儲けしたのです。
ミィ:なにそれー、ヘッジファンドってひどいですね! ヒドイ!
長谷場:確かにタイ側から見るとひどい話なんだけど、ヘッジファンドにお金を預けていた人から見たら「たくさん儲かって良かった」となってしまうんだよね。物事は両面から見ないと何とも言えないんだよ。
ミィ:うーん…、ビジネスはキビシー。
長谷場:ところでタイでボロ儲けしたヘッジファンドですが、タイだけでは終わらずマレーシア、インドネシア、フィリピン、香港、韓国が狙われました。中にはタイと同じ問題を引き起こした国もあります。こうした一連の流れを「アジア通貨危機」と呼んでいます。
ミィ:大変だったんですね。
—次週に続く
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