長谷場:前回は1970年代の対日貿易赤字から反日となったことで、タイ政府は外国企業の活動を制限する法律を制定した話でしたね。
ミィ:はい。そしてそれが2018年の現在に影響を与えていると。
長谷場:今回と次回の話はその外国企業規制法というのが2000年に少し変わったという話です。2000年より少し前の1997年には何がありましたか?
ミィ:アジア通貨危機。トムヤムクン!
長谷場:そう。正確には英語ではトムヤムクン・クライシスですけど、良く覚えていましたね。この時、ヘッジファンドからバーツを売り浴びせられてタイ政府の外貨準備という形で蓄えられていたドルが無くなってしまいました。このため、タイ政府としては何とか海外からタイにドルを持ってこないといけません。
ミィ:稼がないといけないということですね。
長谷場:はい。国として外貨を稼ぐにはいくつかの方法があります。ざっくりと①貿易で稼ぐ②海外の企業からタイに投資してもらう③観光などで外国人にタイに来てもらいお金を使ってもらう、といったことが考えられます。この中で、「①貿易で稼ぐ」ということについては実は通貨危機の結果、有利な状況にありました。アジア通貨危機の時の借金の話を覚えていますか?外国から借りていたお金を返すのにバーツでは倍になってしまった、という話。
ミィ:もちろん覚えていますよ。思い出しただけでも怖いですね〜。
長谷場:実は、逆にタイで作った物を輸出する場合には半額で売れたんです。例えば、タイで作って2,450バーツで輸出したものは固定通貨危機前は1ドル24.5バーツで約100ドルでしたが、通貨危機後は最高で1ドル50バーツ超になったので半額の50ドルになったんです。だから生き残った企業にとっては輸出する条件としては良くなっていました。
ミィ:へぇ。トムヤムクンにも良い部分があったんですね。
長谷場:③の観光については、もともとタイは観光立国だったので観光でも外貨を稼いでいました。当時のデータを確認するとアジア通貨危機でも観光収入は落ち込まず、一方でタイ人の海外旅行が減ったので出ていく外貨が減っていて、観光全体ではプラスに働いているんです。
ミィ:外国人にとってタイ旅行は安くなって、タイ人は海外旅行が高くなってしまい行けなくなってしまった。その結果、観光としての収支は大きくプラスになったというわけですね。
長谷場:そういうことです。そして、問題が②の「海外の企業からタイに投資してもらう」という部分です。タイ政府は「外国企業を呼び込まないといけない。でも、タイ企業も守らないといけない」という状況に追いこまれました。タイ企業も弱っていましたからね。
ミィ:うわー、で、どうしたんですか?
長谷場:そこで外国企業規制法を改正して外国人事業法というのを1999年(2000年施行)に制定しました。この法律は現在も有効で、日系企業がタイでビジネスを行うためには必ず理解しておかないといけない法律ですね。詳しくは次回!
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