世界中のサッカーファンが注目する「ユーロ2016」
ネットの賭博が横行し、魔の手は若者たちにも……
ワールドカップやチャンピオンズリーグに次ぐ、サッカーの国際大会といえば、UEFA欧州選手権(通称:ユーロ)。4年に1度、欧州の強豪国が覇権を争う大会であり、世界的に注目度も高い。イングランド・プレミアリーグに慣れ親しんでいるタイ人にとってもユーロは大人気。しかし、この国では少し違う話題に注目が集まる。「賭博」である。
13日、国家警察のポンサパット大将は、ユーロ開幕から3日間で、賭博での逮捕件数が1028件にも上ったことを発表。最も多かったエリアがバンコク都内で逮捕件数566件、1000万バーツ以上の金が動いたとされる。
タイ商工会議所大学は、全国1204人を対象にユーロに絡む出費調査を行い、経済効果は765億4100万バーツと試算。なんとその内訳の第1位が賭博で、578億9500万バーツ。同大学のワシラ氏は「1試合の平均費用は4554バーツ。2次予選は平均7160バーツになる」と話した。
すでに1000件以上の逮捕件数、試算金額約580億バーツにも上る異常な状況が起こる背景には、なんといっても賭け事をしやすい環境が挙げられる。ご存知の通り、今やタイはネット社会。タイ語で「サッカー賭博」と検索すると、いとも簡単に賭けを受け付けるサイトがみつかり、そこで登録して指定の口座に入金すればパスワードを発行、その後は簡単に賭けを続けることが可能に。運営者は大半が外国人とされ、ネットの特性上、対象が未成年にも及ぶことが大きな問題となっている。
チュラロンコーン大学の調査機関が発表した内容によると、サッカー賭博に手を染める年齢は10〜14歳で、最も多い層は15〜35歳。また、同大学が高校生3807人を対象に行ったアンケートでは、約3分の1がスポーツ賭博をしたことがあり、そのうち26%が毎週サッカー賭博を行っている。逮捕されることにも不安を感じず、16・5%がユーロでも賭けると答えているから驚きを通り越して、もはや“賭博が文化”のようにも思える。
警察は専門チームを作って対応するというが、対処療法にしか見えない。教育を含め犯罪行為に対する罪の意識の改革こそが、今後は求められるだろう。