世界に迫るタイ医療

メディカルツーリズム柱に、官民が目指す医療大国という“称号”

 

医療大国“タイ”が衆目一致する日も近い?

 9月28日、タイ証券市場にビッグニュースが舞い込んだ。バンコク病院やサミティヴェート病院などタイで名だたる病院を運営するタイ私立病院大手のバンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)が、バンコク都内ウィッタユ通りの老舗ホテル「スイスホテル・ナイラートパーク」などが建つ土地約40ライ(1ライ=1600㎡)のうち、15ライを108億バーツで取得すると発表した。来年4月をめどに、アジア初の総合メディカルセンター「BDMS Wellness Clinic」をオープンさせるという。ちなみに、買収された同ホテルは、日本の天皇・皇后両陛下に加え、歴代首相らも宿泊した名門ホテルだが、敷地内に残る歴史的施設は存続する。

 今回の買収劇。日本では株式会社による病院経営が規制されているのでピンとこない人も多いだろうが、世界では多くの医療機関が株式市場に上場。その中で、時価総額・収入において、BDMSは世界で5本の指に数えられる巨大医療グループだ。

 しかも、タイでは、先日コブカーン・タイ観光・スポーツ相が「今後10年(2016〜25)でタイを世界のメディカルセンターに発展させる」と公言。指標として、タイを訪れる外国人の理由が、観光、ビジネス(駐在、出張含む)に続いてメディカルツーリズムだとし、その消費額も1人当たり平均30万バーツと高額。世界のメディカルツーリズム市場でも、タイは13位と比較的高い位置につけているという。

 BDMSにとっても、この政府方針は、グローバル展開に向けた規模拡大への追い風となる。同社のプラサート社長は「オープンするクリニックは、アンチエイジング、健康関連サービスのほか、予防医療に注力する施設とし、同分野で先進的な欧米に匹敵するレベルを実現する」と意気込み、グループ全体で約1000億バーツの売上を目指すという。

 今後は、ASEAN経済共同体(AEC)の発足で、医療従事者の流動性が高まり、各国で優秀な人材の引き抜き激化が予想される。それだけに、BDMSの発表が、AEC域内医療マーケットに与えたインパクトは大きい。タイが名実ともに医療大国となる日も近いのかもしれない。

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