絶好調の中国人によるタイ観光。しかし、その裏で暗躍する“中華系”企業とは一体?
中国からの観光が絶好調でも、タイの利益にはなっていない。そんな由々しき事態が起きている。
例年最も多い外国人観光客は中国人で、タイ政府観光庁は、今年の中国人観光客数を1040万人と見込み、旅行業協会は1300万人と予想。タイ国政府観光庁アジア・南太平洋のシースダー副部長は「中国人マーケットはまだまだ上向きで、さまざまな施策を用意している。ウータパオ空港を利用すれば、安価で、チャーター機も出せる」と鼻息が荒い。
しかし、好調ぶりが伝えられる裏では、あまり穏やかではない事件も起きている。中国人がタイ国内でタイ人だと偽り、違法にビジネスを行っているのだ。
今年に入り、プラユット暫定首相は取り締まりを強化し、6月、南部プーケット県で旅行会社を営む中国人2人を逮捕した。“トランリー・トラベル”という旅行会社を運営していた2人は、20年以上前にチェンマイ県とチェンライ県から入国し、身分証明書を偽造。5年前にプーケット県で旅行会社を立ち上げ、事業を拡大させていった。わずか5年の間にホテル、レストラン、スパなど17もの企業、130台のバス、35隻もの船を有するまでに成長。だが、納めた法人税は毎年わずか数十万バーツだけだったという。
今年6月20日までに、バンコク都内、チェンマイ県、チョンブリー県で同様のケースで逮捕されたのは、636人だったことも判明。国税局のプラソン局長は「我々ができることは納税を確認するだけ。しかし、偽装企業は、タイ国内で金を受け取っているわけではない。一般のユーザーは中国の旅行会社に代金を支払っているため、我々は関知できない」と説明した。中国で支払われた旅費が、そのまま中国でストックされ、タイに入ってこないという。タイ観光にもかかわらず、観光収入が還元されないわけである。
問題解決のため、タイ政府はレストランや旅行会社、不動産、スパ、自動車レンタル、お土産販売、オンライン小売業などを対象に、外国人が出資する企業の調査を行うという。さらには情報技術・通信省(ICT省)から協力を得て、ネット上の違法な取り引きの取り締まりを強化する。
いくら追い風が吹いている観光業といえど、これでは元も子もない。一刻も早い対応が求められる。