タイ北部をマイカーで旅する中国人が急増
経済発展が期待できる一方、問題も起きている
近年、チェンライ、チェンマイなどのタイ北部に、自国からマイカーで旅行に訪れる中国人観光客が増加している。
彼らの多くは、中国・昆明〜タイ・バンコクを結ぶ南北経済回廊(1800㎞)の雲南省南部の景洪からラオスを通る「R3A」ルートを利用する。関税局チェンライ事務所チェンコーン支局によると、同ルートを利用してマイカーでタイに入国した中国からの車の台数は、2013年の1487台に対して15年は9248台と約7倍に。今年2月の旧正月期間だけでも、同県を訪れた中国人の車の台数は、1000台を超えたという。
タイ・中国は交通協定を結んでおり、事前登録すればマイカーに乗ったまま越境できる。今回、タイ北部への中国人旅行者が増加した背景には、中国で12年に公開し、大ヒットした映画「ロスト・イン・タイランド」がある。同作はチェンマイの観光地を舞台にしたコメディ映画。作品中の足跡を辿ろうと、多くの中国人が訪れるきっかけとなった。
チェンマイ県観光産業局のポーンチャイ局長は、マイカーで訪れる中国人は飛行機で訪タイする中国人より経済力が高く、「タイの観光収入を押し上げる」と好意的。その一方で交通違反や事故が相次ぎ、社会問題化している。その大きな原因は交通ルールの違いにあり、チェンマイ県地方警察のモンティー総監も「タイは中国と違い左側通行。運転に慣れず事故を起こすのだろう」と話す。こうした事態を受け、3月2日、陸運局チェンライ事務所のスカンヤー氏は問題解決に向けた施策を発表した。
これまでも、自動車でタイに入国する場合は、対人賠償の自動車保険への事前加入は必須だったが、今後は同乗者も補償範囲となる保険への加入が新たに義務付けられた。さらに、入国の10日前までに観光プラン、運転免許、パスポートを同陸運局事務所に提出。入国当日には再度免許を提出し、タイでの運転許可証発行のため、講習会(約20分)へ参加が必要となった。
本来であれば観光促進を理由に規制は緩和される。厳しくなった背景には中国人の交通マナーの悪さも理由として挙げられる。とはいえ、付け焼き刃的な講習会で、果たして改善するのか。疑問が拭えない。