法王就任問題から端を発した僧侶と軍隊の衝突。背景にあるのは赤シャツ隊と民主党
僧侶たちによる政局の代理戦争なのだろうか?
15日、ナコーンパトム県のプッタモントン公園でセミナーに参加した僧侶と仏教徒合わせて数千人が軍隊と衝突した。僧侶たちは「タイ仏教聖職者 転覆計画を防ぐ」という、いかにも過激なタイトルのセミナーのために集った。目的は、政府への抗議、ソムデット・チュアン僧侶の早期法王就任、仏教をタイの国教として認めさせること、などを話し合うため。
なんとセミナーの主催者が、赤シャツ隊(反独裁民主戦線)支持派としても知られるプラ・メーティタマチャーン氏だというから、どうしても政治色が強い。
軍事政権下の現在、公共の場所で5人以上の集会は認められず、同セミナーには軍隊が出動した。そして、当然のように事件が勃発。午後3時、出入り口を軍用車両で塞いでいた軍隊に、僧侶が「会場まで食べ物や飲み物、トイレを運びたいため、自動車を通らせてほしい」とお願いすると、軍隊は「上層部の許可が必要」と返答。しかし、30分経っても車両は移動されず、しびれを切らした僧侶たちが突入し、警察と一悶着となった。当時の様子を映した動画では、僧侶らが軍隊に掴みかかり、自動車から引き剥がそうとしていた。現場にいた多くのメディアは「軍隊は反撃しなかった」と報道。数千人もの僧侶がいたため、大騒動に発展する可能性があり、尊敬対象の僧侶に手を出すことを畏れたのだろうと想像ができる。
同事件について、赤シャツ隊のリーダーであるチャトゥポーン氏は「軍隊は過ちを犯した」と真っ向から批判。さらには、2013年の反政府デモ時に民主党を支持していた名物僧侶プラ・プッタイッサラ氏が、同氏が推す法王就任に反対したことに言及し、「彼も政治問題に関わっていただろう」と指摘した。一方、プラ・プッタイッサラ氏は16日、ナコーンパトム県プッタモントン署に、集会法に反した同セミナーの主催者を罰するべきだと訴えを提出。警察も捜査を開始し、もはや状況は混迷の様相を呈している。
それにしても赤シャツ隊のリーダーが出てきて、民主党支持派の僧侶が争っているとすれば、まさに政治論争そのもの。この国が抱える問題は、一見シンプルでありながら、かなり根が深い。となれば、この問題が簡単に片付くとも思えない。