入隊が決まり卒倒する人、男性のIDを持つ美しい女性たち……
ツッコミどころ満載の風物詩的なドキュメンタリー。
タイでは今でも徴兵制が敷かれ、21歳になった男性に対して、徴兵検査が行われる。そして、4月(今年は1日〜12日)の風物詩的な光景となっているのが、徴兵が決まる“くじ引き”である。
海軍は特に厳しいと言われ、その場で入隊が決まると卒倒する者が出てくるなど、実にドキュメンタリーな映像が、毎年国民の注目を集めている。
それだけではない。会場にはなぜか男性じゃない人の姿もちらほら。容姿は女性そのものだが、IDは男性。いわゆる“レディボーイ”である。ショックのあまり気を失う男性を尻目に、どこか恥ずかしそうな表情を浮かべる美しい女性たちが同居する空間。これをカオスと言わずして、なんと言おうか。
ちなみにレディボーイは、元々は「精神障害」という理由で兵役免除を認められていたものの、メンタルの病気という診断が、その後の就職にも影響を与えるなどの問題が起き、2012年からは「性同一性障害」として兵役免除となり、現在に至っている。
ほか兵役免除となる対象は、大学院生、生涯を僧侶として過ごす者、健康上の理由がある者。また、有名俳優らが勉学を理由に徴兵を先延ばしにしていることも多い。
一方、不景気が続くタイでは、軍隊の給料が高くなったことを受けて、志願者が増加中。特に南部の天然ゴム農家の不振などもあり、志願者数は、2010年が約2万だったが、2014年は約3万3000人。今年の応募者数は、既に2万5000人を超えている。
元々、タイでは「将来なりたい職業」のうちに「軍隊」を挙げる子どもが多く、14歳から入学できる軍事学校の人気は加熱傾向。定員1000人に対して、10万人以上が受験し、合格倍率実に100倍という狭き門となっている。将来、成功すれば、プラユット暫定首相のようなエリートコースが待ち受けているため、その人気ぶりもうなずける。
以上、矢継ぎ早に説明したが、くじ引き会場の様子については「タイ、徴兵」とネット検索すれば動画も見つかるため、気になる人はぜひチェックしてほしい。