政権発足から約8ヵ月。
プラユット暫定首相の対日外交が、実を結びはじめている
安倍晋三首相との首脳会談で、日本側からタイのインフラ整備への「協力約束」を引き出させてから約2ヵ月強。5月11日、タイを訪れた和泉洋人首相補佐官とプラユット暫定首相ほか閣僚らが相次いで会談。その場で、チェンマイ〜バンコクを結ぶ670Kmとカンチャナブリー〜レムチャバン間約574Kmの鉄道整備事業の協力覚書(MOC)を、今月26日にプラジン運輸相が来日した際に、結ぶことを申し合わせた。MOCへの署名後、日本はすぐに現地調査団を派遣。早ければ2016年にも、着工されるという。
この報道に、あるタイ人識者は「一昔前は、日本の高速鉄道(新幹線)が通るなんて夢物語だった」と驚きを隠さない。ただ、タイ軍事政権内には、日本が提案するチェンマイ〜バンコク間の高速鉄道化に対して、「こちら(タイ)としては、複線化案に留めていた。新幹線では黒字化は難しい」(プリディーヤトーン副首相)と懐疑的な意見もある。
一方、遅々として進まなかったミャンマー・ダウェイ開発にも進展が見え始めた。日本、タイ、ミャンマーの3ヵ国が、7月にも開発に関する意図表明覚書(MOI)に署名するというのだ。和泉補佐官は、タイ政府側に、タイとミャンマーが設立した特別目的事業体(SPV)に「日本も出資する」との方針を伝えた。
同開発は、当初整備を請け負っていた企業の撤退などによって、ほぼ手付かずの状態が続いていた。日本の本格参入(資本投入)は、開発前進への追い風となることが期待される。
加速する日タイ協力関係。ご多分に漏れず、タイは約1600社(バンコク日本人商工会議所会員数)の日本企業が進出するアジアの拠点、安倍首相の成長戦略の要の国であり、日本にとっても利益享受が見込まれるからだ。
しかし、ここまで早く(首脳会談から)、日本がタイに擦り寄るには理由がある。中国によるインフラ投資銀行の創設や、タイ南北横断鉄道の共同開発など、タイと中国の距離の縮まり具合が、親中穏やかではなかったからだろう。対タイ投資を巡る日本と中国。漁夫の利を得るのはタイか?