相続税に続く、タイ初となる悲願“税”は時期尚早?
大願成就ならず。プラユット暫定首相の公約でもある不動産税(固定資産税)の閣議提案が見送られた。ご存知の通り、同税の導入は、これまでもタクシン元首相派及び反タクシン派を問わず、時の政権が幾度も挑むも実現しない最難関のハードルだ。
同じく導入が難法とされてきた相続税は今年から施行され、1億バーツ以上で親、子孫が相続する場合は5%、それ以外は10%と、日本に比べれば対象範囲が限定的で、低い税率だが、タイにとっては画期的なできごとであったことは間違いない。加えて、本誌でも既報だが、来年1月からは家族や低所得者を優遇した個人所得税制も改正される。
勢いに乗じて固定資産税も導入したかったに違いない。実際、財務省関係者も「本来は所得税の税制改正に合わせて閣議提案するはずだった」と、当たらずといえども遠からずだったようだ。
担当するアピサック財務相によれば、法案では、対象は5000万バーツ以上(評価額)の戸建て住宅と2戸目以上の住宅、別荘、商業用目的地、未利用地。それぞれ評価額の0・2〜最大でも1%の税率だったという。導入に伴う増収予想は300〜400億バーツで、前述の個人所得税制改正による減収分を補填できるはずだった。
反対したのは言わずもがな富裕層(既得権益者)であろう。ただ、今回は見送られたが、これまでの44条の強権発動や政策実績(相続税導入)を考慮すれば、歴代政権が成し得なかった悲願達成も時間の問題だろうか。
歴史的にタイ政府が税制改革に力を注ぐのは、租税力の弱さが理由だ。ちなみにタイの租税はGDP比20・6%で、これは経済協力開発機構(OECD)が発表する40・1%の半分。東南アジア平均24・5%をも下回る。税収は国家財政に直結するだけに、政府及び財務省が制度導入を望むのは至極当然であり、同税導入はタイ政府にとって悲願だ。それに、現政権を盤石にし、憲法改正後の民政移管でも威光を残したいプラユット暫定首相にとっても、目玉公約は是が非でも実現したいはず。夢のまた夢と言われた相続税の導入を成し遂げた豪腕ぶりを、再度発揮するのか注目したい。