国民的存在の僧侶、逝く。ルアンポー・クーン氏が死去91歳

国民的存在の僧侶、逝く。ルアンポー・クーン氏が死去91歳
 

タイの民衆と仏に一生を捧げ、
誰よりも愛された偉人の軌跡

16日午前11時45分、ナコーンラチャシーマー県ダーンクントット市の病院で、タイで最も著名な僧侶、ルアンポー・クーンさん(プラ・テープウィタヤーコム)が心肺停止で死去。91歳だった。

ルアンポー・クーンさんは子どもの頃に両親を失い、6歳で寺に預けられ、21歳で出家。ラオス、カンボジアでの修行を経て、同県に戻り、ワット・バーンライという寺院を建立。難しい仏教の世界観を平易な言葉で民衆に説明し、決して偉ぶらない愛情溢れる接し方が心を掴み、説法には連日多くの人が集った。

お金にも執着しない姿勢も共感を呼ぶ。タンブン(お布施)されたお金の半分を返金し、残りを王室への献上や寺院の維持費に充てるなど、どこまでも利他を貫いた。同県の病院や学校、大学設立のためにも奔走し、プミポン国王が同寺院を訪問された際には、1億7200万バーツを献上。弟子によれば、これまで寄付した金額は合計50億バーツ以上。仏を具現化したようなルアンポー・クーンさんは、いつしか「ダーンクントット市の神様」と呼ばれるようになった。

その知名度はとどまることを知らず、タイの有名バンド「カラバオ」は、ルアンポー・クーンさんのために曲を作り、快気祝いの際には、元首相など多くの政治家・著名人が駆けつけた。また、ルアンポー・クーンさんが祈祷したお守り(プラ・クルアン)は「あらゆる災厄を避けることができる」というプレミアがつき、定価100〜200バーツが5〜10倍という高値で売買され、なかには数百万バーツになるものもあった。

ルアンポー・クーンさんは生前、自らの遺体をコンケーン大学医学部に献体し、医学の発展のために役立てるようにと遺言を残していた。葬式には、偉人の死を嘆く20万人もの信者が集まり、医療の研究費と葬式代への寄付金は1750万バーツを超える。また、同病院には、ルアンポー・クーンさんと同じように自らの遺体を献体したいと名乗り出る人が後を絶たず、1日平均100人ほどが志願しているという。

死してなお影響を与え続ける国民的存在のルアンポー・クーンさん。ご冥福をお祈りいたします。

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