未返済総額は688億B。政府は強硬手段に出た
今年6月から奨学金滞納者に対し、その返済金を毎月の給与から天引きすることが学生ローン基金から発表された。まずは財務省中央会計局に勤める公務員を対象に始まり、徐々に他の省に拡大させる。民間勤めは10月開始を予定しているという。とはいえ、どのように回収するのか。
昨年発効された学生ローン法により、事業者は奨学金の滞納者に対し、その支払額を給与から天引きできることが明文化された。滞納者は、入社後30日以内に自分が奨学金返還者であることを会社に報告。個人の奨学金情報を公開し、給料から自動的に引かれるという流れだ。地方行政局、社会保険事務局、国税局、携帯電話といった通信会社などからの情報提供に加え、タイ商工会議所やタイ工業連盟などとも連携を図ると同基金は公言し、滞納者への包囲網を準備する。
タイの奨学金制度は1996年に始まり、2017年までに延べ540万人が利用。計5,600億バーツが貸与されてきたが、そのうち約12%にあたる688億バーツが未返済。さらに、決済手続中にも関わらず債務不履行と認定された人は6割超えとも言われている。
学生ローン基金のチャイナロン管理者は、「奨学金は政府による支出のため、滞納が続くと後輩たちへの貸与額の減少にも繋がる」と次なる問題点を指摘。続けて、「多くのタイ人は、収入をうまく管理できない。さらに、社会人になると奨学金以外の借金を負う人も多い。奨学金の金利は1%と低いため、みな後回しにしているのではないか」と言及した。
今回の件を聞いてまず頭に浮かんだのが、タイにおける債務者の多さ。15年の家計債務総額は国内総生産(GDP)比で81%という結果もあり、奨学金に関わらず“後で”払うという考えは、タイ全土に浸透しているのか。
一方で日本は、奨学金による破産が過去5年で延べ1万5千人という社会問題になっている。どちらも内容は異なるが、学生の未来を広げるための奨学金が、ただの重荷になってしまう世の中だけは避けたい。