害虫による病気から人々の命を守る
社長 高橋 功一
《プロフィール》
たかはし・こういち
■1961年生まれ。日用雑貨製造・販売の外資系企業を経て2010年にフマキラー入社。営業副本部長を務め15年より現職。
■愛読書:「人を動かす」(デール・カーネギー)
■趣味:ゴルフ
■尊敬する人物:野茂英雄氏
■バンコクの行きつけの店:笹弥
■休日の過ごし方:ゴルフ、家事
タイでの事業について教えてください
1993年にマレーシアから蚊取り線香の輸入を開始し、2000年よりタイでの生産を開始しました。12年に株式の7割を買い取りまして、社名も日本と同じフマキラーに改めました。現在の商品構成ですが、売上の9割は蚊取り線香が占めています。ほかには、蚊を退治するマット、エアゾールです。タイでは蚊取り線香8種類、マット4種類、エアゾール4種類を販売しています。エアゾールは蚊やハエといった飛ぶ虫に効果があるものと、ゴキブリなどの地面をはう虫に対して効果があるものの2種類に大別されますね。工場はコーラットにあります。
タイの現況をどうご覧になっていますか
ほかの東南アジア諸国に先駆けて、高度成長期から安定成長期に入っています。これまでのような急速な成長は見込めませんが、まだまだ商機が広がっているのは間違いないでしょう。当社もタイにおいて、日本ほど多くの商品ラインナップが揃っていません。ある程度の経済成長を果たしていることもあり、今後は高付加価値型商品の販売移行期に入っていきます。新ステージに合わせた商品戦略をこれから取っていく方針ですが、普及品と高付加価値商品のバランスというものが重要となってくるでしょう。3年以内に、積極的にいろいろな手を打っていかなければなりません。商品種目別に申しますと、特にエアゾールについては、まだ大規模な商品展開をタイでは行っていませんので、特に開発に力が入ります。
5月から、エアゾール新商品の販売を本格化されるそうですね
はい。「ベープ・ワンプッシュ」という小型エアゾールです。ワンプッシュで12時間も効果が持続し、蚊を寄せつけません。通常のエアゾールは押し続けると中身が噴射され続けるのですが、この商品はワンプッシュで適量のみが噴射される仕組みになっています。容量は10ミリリットル。カバンでの携行も容易な小型ながら、1日ワンプッシュで、30日分使用可能です。タイ人が好むオレンジの香りをつけています。マーケティング調査における満足度もとても高く、調査対象者の98%が「買ってみたい」と回答しました。自信を持って送り出す一品です。
新商品の販売促進戦略についてはいかがでしょうか
まず大量のTVCMを投下し、商品の特徴をお客様に伝えます。合わせまして、販売代理店を通じて小売店に対し、店頭キャンペーンなど販売促進を仕掛けていく方針です。主力商品である蚊取り線香につきましても、販売促進活動を積極的に展開していきます。
熱帯を中心に、蚊が媒介する病気が流行しています
タイではデング熱による死亡者が多いですが、世界においてもマラリアや日本脳炎など年間数千万人から1億人近い人々が、蚊が媒介する病気にかかり、その結果多くの貴重な人命が失われています。南米では新たにジカ熱も流行しており、さらなる対策は待ったなしの状態です。当社が効果の高い商品を出すことにより、衛生や生活を守れるということで大変やりがいを感じます。マレーシアやベトナム、インドネシアなどでも展開しており、各国の虫について研究を進めているのですが、各国で薬に対する蚊の強さは異なることがわかっています。日本より東南アジア諸国の方が薬への耐性が強く、なかなか死にません。こういった周辺国における研究成果は、タイでの商品開発にも生かされています。
今後について教えてください
新商品をさらに増やすほか、既存製品の質の向上も図っていきます。ハエやゴキブリといった、蚊以外の虫に対する商品は特にこれから力を入れていくことになるでしょう。周辺諸国で当社が発売した商品の、タイへの導入も進めていく方針です。東南アジアは日本と異なりまして、1年を通じて蚊の脅威にさらされています。害虫による病気から人々を守るという、本業を通じた社会貢献を行っていくことが、当社の存在価値です。理念を持ち、まい進すれば、自ずとタイに根づいた会社となるでしょう。このほど、医薬品の許認可権限を持つ、タイ国食品医薬品承認局(FDA)から、今年の「クオリティーアワード」の表彰を受けました。コンプライアンスや社会貢献、生産管理などが優れた企業、年間50数社が表彰される大変名誉なものです。ですが、これにおごることなく、今後もタイ社会に愛される会社を目指して努力します。
編集後記
東南アジアや南米で蚊が媒介する病気が流行している昨今、フマキラーの存在感は世界的に増している。世界各国で集めた同社の知見が共有され、新たな商品が生まれることで、さらに衛生や健康の向上につながる。本業を通じた社会貢献を行える企業であり、さらなる商品開発が楽しみだ。東南アジアでは殺虫剤でも香りをつけることが好まれることを知った。安全面や衛生面はもちろんだが、地域に合わせた快適性向上も重要ということか。(斯)