さらなるネット利用者増でBtoCが急成長。将来は越境ECも
タイの電子商取引(EC)市場が拡大している。昨年、発足したデジタル経済社会省傘下の電子取引開発機構(ETDA)の調査によると、タイのEC市場は、前年比12・4%増の2兆5200億バーツに達したという。内訳を見ると、「BtoB」(企業間取引)が1兆3800億バーツ(前年比3・5%増)と半数以上を占める一方、「BtoC」が同43%増の7292億バーツと急伸。不景気により低迷が続く個人消費にとっては、改善の兆しとなった。「BtoG」(企業対政府間取引)は4130億バーツ(3・2%増)だった。また、ETDAは同市場について、「2017年も10%台で成長するだろう」と予想する。
好転の背景には、同市場を取り巻く環境の変化も関係している。昨年4月、中国のEC最大手アリババ集団(浙江省)は、独投資会社系の同業大手ラザダを買収すると発表。タイやシンガポールをはじめとするASEANで、幅広く事業展開する同社の買収で、アジアのEC市場での勢力拡大を狙う。しかもラザダは、アリババによる買収発表前、ラザダ(タイランド)が、タイにASEAN地域事業統括会社「ラザダ・IHQ」を設立。タイを中心とするASEAN市場の拡大に乗り出したばかりだった。さらに、LINEがタイでモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」を展開する連結子会社を通じて、タイの公共交通システム及びオンライン店舗の電子決済用スマートカード「Rabbit(ラビット)」を提供する企業と資本提携し、市場拡大を後押しする。
そのほか、国家放送通信委員会のターコーン事務局長が「タイの全国民が高速インターネットを使えるよう、インフラ整備が先決」と話す通り、政府が推し進めるデジタルエコノミー政策の一環で進む高速通信網の整備など、官民挙げての取り組みも、市場拡大のスピードを加速させている。
当然、マーケットが拡大すれば、流通面を支える物流網は不可欠で、物流業界にとっても期待値は高い。すでに一部日系物流会社も参入し、将来的にはAECという巨大経済圏での域内越境ECも活発化するだろう。そうなれば、すでにグローバル物流網を持つ大手日系物流企業にとっては有利。2017年。タイEC市場から目が離せない。