38年ぶりに法改正するBOIが、
矢継ぎ早に発表する投資奨励策を考察
「これでもか!」の大盤振る舞い。タイ政府は15日、タイ投資委員会(BOI)が提案した投資奨励法(1977年)の改正案を承認した。施行されれば、BOIの業務円滑化と外国企業の投資誘致を強化するさらなる手厚い優遇措置が図られる。首相府のサンセーン広報官は「時代が変わり、世界貿易機関(WTO)のルールと隔たりがあった。法改正で、投資数はさらに増えるだろう」と期待する。同日、ヒランヤーBOI長官が詳細を発表。それによると、改正案では、研究開発分野の企業に対する恩典において、材料や資材の輸入税の減免、法人税免税措置を従来の8年から最大13年へと拡大するとともに、免税期間終了後の5年間の減税率(現行50%)を90%に引き上げるという。
また、前述(研究開発分野対象)とは関係なく、2015〜16年中に投資申請した企業が、17年末までに投資を実行した場合、法人税の免除を最大2年間延長。さらに、政府が進める経済特区向けの投資プロジェクトについては、同じく法人税の免除を2年追加(上限8年)。経済特区外への投資プロジェクトは同1年(上限8年)伸ばす。
ゾーン制の廃止後、奨励対象を地方への産業誘致を目的に、経済特区内での産業クラスターへとするBOI。同長官は、自動車・同部品、電機・電子・通信機器、環境に優しい石油化学・化学製品の三つの産業クラスターの開発地について言及。ナコーンラチャシーマー県、プラーチーンブリー県、アユタヤ県、チャチューンサオ県、チョンブリー県、パトゥムターニー県、ラヨーン県の7県が該当し、追加的な投資恩典を付与するという。ただ、農産品加工と繊維産業クラスターについては、「原材料次第で地域を特定(構築)する」とした。
あの手この手と投資奨励を発表するBOI。GDPの7割を占める輸出依存度を引き下げ、民間投資による内需主導型への変革。それこそ、タイ政府が掲げる「中所得国の罠」からの脱却が目的だろう。とはいえ、焦りともとれる矢継ぎ早な対応。今年1月1日から始まった新投資制度。本当に順調なのだろうか?