担当エリアはASEAN全域最後発ゆえの差別化を打ち出す
取締役 高瀬 裕三
《プロフィール》
たかせ・ひろみつ
■ラジオ関西にて6年間の勤務を経て、台湾に留学。台湾、マレーシア、中国の日系メーカーでキャリアを積み、来タイ。
2009年に積水化学に入社し、16年4月にタイ現地法人のトップに就任。現在に至る
■座右の銘:人生は旅と同じように二度と同じ繰り返しはできない
■趣味:イスラム建築鑑賞
■バンコクのいきつけの店:ホテルオークラの山里
■休日の過ごし方:
水泳、家族と過ごす。時間があればタイの地方へ
出向き織物の産地を巡る
■社用車または愛車:アコード
タイ進出の経緯を教えてください
約20年前より駐在員事務所を置いていたのですが、現地法人がないとビジネスにつながりにくいということで、2010年に立ち上げました。その前には1年間ほどかけてマーケティングし、需要が見込める約150社を回り、目星がついた後のスタートです。弊社は日本では知名度がありますが、タイではまだまだ知られていません。実際にお客様と話をしていくなかで、「積水化学がタイにあるなら製品を購入したい」というニーズがありましたね。
主力製品はどんなものでしょうか
積水化学には、3つのカンパニーがあります。1つ目は住宅、2つ目は環境ライフライン、3つ目は高機能プラスチックス。私どもは、高機能プラスチックカンパニーの販売会社です。タイでの主力製品は、工業用のテープや包装資材、発泡体、フィルム関係。高機能プラスチックスの事業会社としては、PEフォームを生産する工場がチョンブリーに、車のガラスの飛散を防止するインターレイヤーフィルムを生産する工場、また塩素化塩ビ樹脂を生産する工場がラヨーンにあります。
主な取引先の業種は
エレクトロニクス、自動車関係が主です。売り上げの割合は、エレクトロニクス60%、自動車関係とその他が40%です。
今後、注力していきたい業種とは
もちろんエレクトロニクスや自動車関連は継続して受注増につなげていきたいですね。それとは別に積水化学のグループが持っている製品をタイに限らず、ASEANでアピールしたい。あとは、BtoBだけではなく、一般向け製品にも力を入れたいですね。例えば、家庭用の高機能畳やゴミ取りローラーなどもあります。タイでも新しい市場を開拓していかないと厳しいですからね。
対顧客については、具体的にどういったことを心がけていますか
第一にスピード対応。例えば見積りは当日以内、サンプルもできる限り当日にお渡しできるようにしています。業界としては、最後発ですので、競合他社と差別化をしなければなりません。「スピード」と「プロポーザル」(提案)、「コンフォタブル」(快適さ)の3つをモットーにお客様に接しています。
ASEANでは、どの国に注目していますか
ミャンマーですね。治安はおそらくASEANで一番安全と言われています。識字率も高く、英語を話す人も多い。どう考えてもタイと同じような生産拠点を担える国はミャンマーしかないかなと。おそらく自動車産業はタイに残るでしょうが、エレクトロニクスはミャンマーに移行する可能性が高いと思います。
ASEANのマーケットはどう思いますか
タイはすでに頭打ちの感じはあり、売り上げを大幅に伸ばすのは厳しいでしょう。ただ今後、大きな成長を考えると、中国からシフトしてくる“中華系”企業にセールスすべきですね。幸い私は中国語を話せますし、スタッフには中国語ができる人間もいますし、韓国人スタッフもいます。
ローカルのスタッフは成長していますか
弊社は海外スタッフを含め、全社で同じ基準のグレード精度を定め、研修を実施しています。それを経て、役職や給料が上がるわけです。ただ、日本語か英語でしか対応できず、タイ人は英語に不慣れですので、私がASEAN専用のグレード精度を作りました。現在はそれを採用し、スタッフのスキル向上を促しています。
今後の戦略を教えてください
視野に入れているのは、セミコンダクター(半導体)業界へのセールス。この分野を開拓できていないので、半導体の製造で必要な高機能耐熱フィルムなどをASEAN諸国にて展開されている、日系企業をはじめ、台湾、欧米系企業に御提案していきたいです。
海外経験が長いとのことですが
中国語の重要性を感じ、ラジオ関西を辞めて台湾に留学しました。そして、オーディオ機器メーカーのパイオニアの現地生産法人に転職し、マレーシアに出向。中国でも経験を詰み、タイ進出を機にこの地に来ました。ただ、リーマンショックで撤退しなければならず、その際弊社に転職し、今に至ります。
休みの日は何をしていますか
水泳か3歳の子どもと遊んでいますね。ゴルフ? やりません。ビジネスだけでお客様に満足いただけるよう、心がけています。
編集後記
台湾やマレーシア、中国でキャリアを積んできた高瀬取締役。若くして中国語に着目し、台湾に留学。語学は堪能で、担当はASEAN全体をカバーする。キャリアアップ制度の不公平を是正するため、ASEAN独自のものを作り出すなど、その行動力は長く海外で揉まれてきた経験を感じずにはいられなかった。「我々は最も後発で進出してきた。だからこそ他社と差別化しなければならない」と危機感を抱きながらも、この地でさらなる挑戦を続けていく。(武)