新憲法公布

早ければ来年9月に実施される総選挙。民政は復活するのか

 

2014年5月のクーデターで旧憲法が廃止され、軍政指名による新憲法起草委員会(CDC)が草案を策定してから3年。ワチラロンコン国王が、今月6日にバンコクのアナンタサマーコム宮殿で新憲法案に署名され、遂に公布・施行の運びとなった。昨年8月に実施した、新憲法草案の是非を問う国民投票では、賛成61・35%、反対38・65%と賛成が反対を大きく上回り、国民は草案を承認。その後、国王の要請を受けてプラユット暫定首相が一部規定を修正し、発布に向けて、国王の署名を待つのみとなっていた。裁判所や監視機関の権力を強化し、政府・政治家の活動を厳しく監視できるようにするなど、「汚職反対憲法」とも呼ばれている新憲法。いまだなくならない汚職の撲滅が期待されている一方で、軍政権力が色濃く残る内容には、懸念する声も挙がっている。

今回の新憲法の施行に伴い、国民立法議会(NLA)は総選挙前に、タイ国家改革評議会(NRC)は国家改革手続法と国家戦略作成法の成立とともに、それぞれその役目を終えることになる。だが、国家平和秩序維持評議会(NCPO)は、新政権発足まで従来同様の権限を完全に行使できる上、選挙後の民政移行期間、少なくとも5年は、NCPOが任命した議員によって、上院(定数250名)が構成。うち6名は、国軍最高司令官、陸海空軍の各司令官、国家警察長官、国防次官と、軍首脳が兼務することが決まっている。また、旧憲法では民選の下院議員による選出としていた首相についても、新憲法では上院議員の得票が必要とされ、さらに、首相条件に「下院議員であるべき」とは明記されておらず、議員以外の人物の就任が可能となっている。建前上は総選挙による民政移管が成されても、実質、議員の多くに軍関係者が残るのは想像に難くなく、プラユット政権が継続する可能性も指摘されている。国民が待ち望んでいた新憲法の施行。民政復帰を目指す注目の総選挙は、早くて来年の9月とされているが、果たしてタイ政権はどこに向かうのか。動向を見守りたい。

 

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