最初は楽天の存在を知らなかった
Founder & Managing Director
パーウット・ポンウィッタヤパーヌ
《プロフィール》
1975年10月9日生まれ、カーンチャナブリー県出身。ランシット大学で建築を学び、アサンプション大学でインターネット&Eコマースの博士号を取得。大学院在籍時にECサイト「Thaisecondhand.com」と「Tarad.com」を立ち上げた。順調に成長を続けると、2009年に楽天と提携を開始。「Rakuten Tarad.com」がスタートし、瞬く間にタイのEコマースマーケットを席巻した
最初は楽天の存在を知らなかった 三木谷社長が来ると聞いて驚いた
―なぜEコマース事業を始めたのですか?
1999年、インターネットがブームになり、趣味で始めたのが、ECサイト「Thaisecondhand.com」。徐々に火がつき、その後、事業になりました。そして、「Tarad.com」を立ち上げ、2009年に楽天と提携し、ビジネスモデルにも変化が訪れましたね。ただ、元々は建築学部出身でしたから、まさか自分がインターネットビジネスをやるなんて、その時は一切考えていませんでしたね。―楽天と提携した経緯を教えてください
最初に楽天側から打診がありました。ただ、当時は楽天という会社を知らなかったんです。大学院の日本人の友人に「楽天ってどういう会社?」と聞くと、とても大きな会社だと教えられ、しかも三木谷社長が私に会いに来るとのことで非常に驚いたのを覚えています。―楽天と提携以降、業績は順調に上がっています
100%増といったところでしょうか。タイのEコマース市場が拡大したことも大きいですね。我々がEコマース市場のトップになると、他の競合も躍進し、タイの市場も明らかに変わりました。何よりも出店しているオーナーたちに利益をもたらすのが、楽天モデルの特徴。他社は、中間マージンなどの売り上げを重視し、収益のことを大切にしているようです。しかし、楽天はショップオーナーとともに成長したいという理念があります。ショップオーナーが独自で値付けをして収益を得るため、あくまでも我々はサポート業務にすぎないのです。―売れ筋商品は?
最も売れているのは、ファッション関連。次いでガジェットやITアクセサリー、サプリメント。タイと日本では、マーケットが違います。日本では食品が最も売れ、ファッション関連が続きます。タイでは物流が整備されていないので、腐りやすい食品は売れません。日本では、お肉を注文しても、冷凍輸送がありますが、タイでは不可能です。―会員数は現在、何人いますか?
会員は約250万人。登録店舗は、約28万店あります。―なぜここまで成長できたのでしょうか?
ここまでもの会員数を獲得できた理由は、何よりも先行者利益だと考えています。なにせ16年、このビジネスをやっておりますし、モバイルやSNSを使えば、まだまだ新しいチャンスもあると思います。時代はモバイル マーケットに突入 ラインの反響も大
―タイでは物流がまだ整備されていないため、商品が届かないといった声も聞きます
今でもたまにありますね。弊社のビジネスモデルはショップオーナーと消費者の仲介であり、ショップオーナーは我々のシステムを利用しています。我々はオーナーに対して、売り上げを伸ばすことを支援しますが、商品の配送はオーナー自らが行います。出店して間もないオーナーですと、たまにトラブルが起きますが、次第に慣れれば配送も早くなり、業務はスムーズになります。最近では、トラブルもだいぶ少なくなりました。―もしトラブルがあれば、どのように対処していますか?
コールセンターがすぐに対応します。もし、それでも対応できない場合は、直接ショップに連絡し、対応してもらっています。商品が届かなかった場合は、最大5万バーツまでの購入金額を弊社が返金いたします。これは日本の楽天の方法を踏襲しています。―事業展開は、Eコマース事業だけでしょうか? 今後ほかにも始めようとしている事業はありますか?
現状は、Eコマース事業だけですが、今後はタイ国内だけではなく、楽天のネットワークを通じ、日本やマレーシア、インドネシアへの進出を目指しています。―AECへの進出も課題になると思います
タイのほかマレーシア、インドネシア、台湾、シンガポールでビジネスを展開しています。5ヵ国とのコネクションがあるため、次のステップとしてのAECは難しくありません。すでにタイでプラットフォームは確立していますので、広げるのは可能だと考えます。―政情不安は影響を受けましたか?
マイナスどころかプラスに作用し、売り上げは非常に伸びました。昨年と比べると、約70%増。ほかの業界は低迷したと思いますが、オンラインビジネスは大きく伸びましたね。外出して買い物するよりは、ネットで買い物をしたほうがラクですから。また、モバイルショッピングも注目されています。メールやラインなどでも買い物ができるようになって、売り上げも増えています。モバイルとSNSは非常に効率よく、収益を上げることができますので。―今後のEコマースはどう変化すると思いますか?
Eコマースは拡大し、モバイルの時代に突入します。スマートフォンからの注文は昨年期に比べて、50%も増えました。今、ラインでプロモーションやキャンペーン情報を送って、数千件の注文があります。今後、弊社はモバイルチームを立ち上げ、モバイルマーケティングを重視していきます。―日本人の働き方について、印象を聞かせてください
日本人と一緒に働くようになって、会社が変わりました。日本の会社でも行われている朝礼や日報を始めてから、規律や時間を守るようになり、仕事がスムーズに進むようになりました。創造力豊かなタイ人の気質と日本人の几帳面さが見事なコンビネーションを生み、いい意味でハイブリッド企業に成長したと思います。―事業のモットーは?
今まで継続してきたのは「強みを生かすこと」と「すぐに取り掛かる」ことです。仮にいいアイデアがあっても、すぐに行動を起こさなければ何も意味がありません。「THINK DIFFERENT & DO IT NOW!」が大切なんですよ。