5年で1.5兆バーツをかける、3県にまたがる巨大国家プロジェクト
巨大国家プロジェクトが動き出す。
チョンブリー、ラヨーン、チャチューンサオの東部3県にまたがり、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった次世代自動車をはじめ、医療、航空、ロボットなどハイテク産業の特定業種の投資促進と陸海空インフラなどを一体的に開発する“東部経済回廊(EEC)構想”が本格始動する。
23日、EEC開発政策委員会(委員長・プラユット暫定首相)のカニット事務局長は、日系企業向けセミナーに出席。「4月5日に、同委員会の初会合を開き、先ずはウタパオ空港の拡張工事と、同空港からスワンナプーム、ドンムアン両空港とを結ぶ高速鉄道計画の承認を得て開発をスタートさせる」と意気込んだ。3空港を結ぶ路線は、既存のエアポートレイルリンクの延伸案が有力。さらに、同事務局はプラユット暫定首相の思いを代弁。政権交代により、全政権の計画が白紙撤回されるといった過去の例から、近くEEC法を可決させ、時の政権に関係なく継続させる一大国家プロジェクトとする。すでに、暫定首相の“伝家の宝刀”44条の発動により、EECは法整備前でも着手できるという。今後5年間に、約1・5兆バーツをかけて前述の計画に加え、レムチャバン・サタヒップ・マプタプットの3港湾の拡張、高速鉄道とは別に貨物用の鉄道複線化計画、高速道路整備など巨大公共事業が目白押しだ。また、同地域はIOT技術を使った環境配慮型エネルギー・社会インフラの次世代型管理を行う都市“スマートシティ”構想など、途方も無い計画が用意されている。
当然、莫大な資金(財源)が必要だが、そこはPPP(官民パートナーシップ)を使い民間力で乗り切るのだという。産業創出の面では、タイの王道“外資のチカラ”を借りる。8日には、タイ航空とフランス・エアバスが了解覚書を結び、整備・補修・オーバーホールができるよう、EEC内での航空産業の活性化を目指す。ほかにも、EEC内では、高度な知識や経験を持つ人材の個人所得税を一律17%とする特典を付与。EECが欲する産業を生み出す企業には「BOIとは、別の優遇措置も施す」という。タイのビジネスシーンにおいて、“EEC”が新たなキーワードとなることは間違いない。