タイは、中進国の罠を脱却できるか? 威信をかけたビッグプロジェクト
タイ政府は28日の閣議で、国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)が提案する「東部経済回廊開発」計画を承認した。今後3ヵ月間をかけて、交通インフラ整備計画を中心とする詳細設計に着手する。
同開発計画は、チョンブリー、ラヨーン、チャチューンサオの東部3県にまたがり、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)といった次世代自動車をはじめ、医療、航空、ロボットなどハイテク産業10業種の投資促進と陸海空インフラなどを一体的に開発するもの。
ご存知の通り、同地域は1981年から国家の総力を挙げて東部臨海地帯(イースタンシーボード)開発計画が進められ、自動車産業を中心に外国資本投資を誘致。多くの日系企業が進出している。今回は、その第2期計画に位置付けられ、首相府のコーブサック政務次官も「スーパーイースタンシーボードに格上げした」と鼻息荒く、用意した資金(予算)は、5ヵ年で約3000億バーツに及ぶ。第一弾として、ラヨーンとチョンブリーの間にあるウータパオ空港を拡張。すでに新ターミナル建設も着工され、2020年の完成を目指す。また、レムチャバン港とマプタプット港も拡張されるが、加えて、もともと海軍港だったサッタヒープ港を商業港として再開発させ、港湾機能そのものを拡大させる。さらに中国による協力で計画が進むバンコク〜ラヨーン間の高速鉄道やマプタプット港への鉄道複線化、道路ではすでにパタヤ〜マプタプット間が着工済のチョンブリーとラヨーンを結ぶ高速道路(モーターウエイ)建設もあり、インフラ計画は目白押し。
一方、同回廊開発では、投資誘致に向けて財務省やBOIといった関係機関による支援策や手厚い恩典の付与も検討される。法整備が必要のため、詳細はこれからだが、法人税の減免及び免除のほか、外国人による土地購入や永住権、各種基金と補助金などお馴染みの“人参”が用意される予定だ。
ちなみに、大メコン圏(GMS)経済協力開発加盟国間で結ぶ物流の大動脈を経済回廊と呼び、中国雲南省昆明からベトナムのハノイをつなぐ「東部経済回廊」と別物であることはお伝えしておく。