中小企業にとっては“奇跡”の施策となるか。過去未納分の税金をチャラに
中小企業への救済策となるか、それとも大損害となるか。タイ国税局は4日、「国税控除・促進法令」を発表。その内容とは、2015年に5億バーツ以下の売上のある非上場企業に対し、今年3月15日までに国税局のシステムに登録すれば、過年度の未納税を遡及をしないという驚くべきもの。簡単にいえば、国税局に素直に売上を申告すれば、過去の未納税に対しては、一切、追徴課税しないという、にわかに信じがたい施策。登録に際しては「すでに脱税容疑をかけられていないこと」「架空請求書の計上、発行をしないこと」「申告した数字が事実と異なっていた場合、即座に適用外とする」などの条件がある。
また、年間3000万バーツ以下の売上の中小企業に対しても大盤振る舞いの優遇策を発表。前述した国税局に登録すれば、未納税の追徴課税はなく、それに加えて2016年度の法人税を全額免除、2017年度については、純利益が30万バーツ以上〜300万バーツ以下の企業は通常の15%から10%、30万バーツ以下の企業は全額免除という、中小企業にとっては奇跡にも近い施策なのだ。
実は昨年、政府は多くの企業から実施を要望されていたが、国税局のプラソン・プーンタネート局長は「それは不可能だ。一般市民は所得税を支払っており、法人だけを優遇するのは平等ではない。しかも実施すれば、年250億バーツ〜270億バーツの税収を失う」と却下していた。
突然の発表となった背景について、同局長は「国税局は多くの企業と一緒に成長をしたい。過去の過ちを水に流し、明るい将来に対し前向きに進んでいこう」と話しているが、表向きの優等生コメントとしか思えない。これまで法人税を納めていない企業があまりにも多かったのは明白であり、「追徴課税ゼロ」という“ニンジン”をぶら下げることで、国税局のシステムで管理したいという狙いが見え隠れする。
これまで放置してきた問題を、このような形で解決させようとするのが、タイらしさともいえるが、それだけ急を要していることは間違いない。吉と出るか、凶と出るかは、現時点ではわからないが、一刻も早く改革を進めなくてはならないという思いは伝わってくる。