3月を過ぎると、メディアで連日取り上げられるのが、北部の煙害。
では、一体なぜ煙害は起きるのか? なぜなくならないのだろうか?
ソンクラン直前になると、お決まりのように報じられるニュースが、北部の煙害。
主にチェンマイなどの地域において、広大な規模で行われる田畑の野焼きが原因とされ、ときには飛行機の離発着への影響や大規模な火災や健康問題をも引き起こし、10年以上も前からタイ政府を悩ませている。
農家は田畑の収穫が終わると、翌年に備えるため、地力の回復を促すことを目的に田畑を焼く。いわば焼畑農業で、熱帯地域から温帯地域にかけて行われている粗放的な農業形態である。
すでにタイでも焼畑は法律上、禁止され、違反者には罰金1万〜10万バーツ、または5〜7年の懲役が科される。
それでも一向に違反者が減らないのは、大半が貧困にあえぐ農家であり、コストがかからずに農地を元の状態に戻すことができると信じているからだ。
煙害による健康障害も大きな問題となっている。
2012年3月〜4月、煙害被害による患者数は1万128人にも上り、2013年は1万468人(同期)、そして2015年には倍の3万人(同期)を超え、さらに増加するとみられている。3月19日、チェンライ県のある病院では、わずか1日だけで2000人の患者が駆け込んできて、結膜炎や呼吸器系の痛みを訴えたという。このまま煙害が続けば、北部の住民は、通常の人よりも肺がんになる可能性が2倍高くなるとの報告もある。
疾病予防局は、2013年、煙害が原因で死亡した人数は502人と発表。2015年も同時期の死亡者数は約500人だと予測している。
タイ地理情報・宇宙技術開発機関のサシプラパー・テーワタータム氏は、3月の大気中の微粒子が非常に増加していることから、煙害の深刻化を訴え、さらには山火事の危険性も指摘。1月中は雨が多かったため、3月に集中して焼畑が行われていることが原因だと説明している。
問題解決のため、とある識者は「農家に健康問題を認識させ、焼畑をせずに土地を回復する方法を指導することが重要」と語ったが、まだまだ時間がかかるとみられている。