洪水によって死者が出る一方、主要ダムの貯水率は今も減少中
「洪水」と「水不足」。一見、相反する問題を、現在タイは同時に抱えている。
2011年の“忌まわしい記憶”が未だ残る洪水。4日、中部スコータイ県では、豪雨により川が決壊し、住宅街まで水が浸食、死者2人を出す被害となった。また、北部チェンライ県では、激しい鉄砲水によって、タイ〜ミャンマー国境が閉められるという事態に。北部に降った雨は、東部や中部にも流れ込み、スコータイ県、ピッサヌローク県、ピチット県が水害エリアに指定された。大雨警報はアユタヤ県なども含む34県に発令され、すでに10人の死者を出している。
バンコクについては、都排水・下水道局の局長が、9月〜11月の雨量は1500㎥になると発表。チャオプラヤー川は、3500㎥までの水量に耐えうるとされ、現在は1900㎥。今後、800機以上の排水機、500万個以上の土のうを用意するという。また、灌漑局の局長は「チェンライ県の洪水は、鉄砲水と大雨が同時に襲ったことが原因。しかし、バンコクで起こることはない」と安全を強調している。仮に2011年と同じ水量がバンコクに流れても、チャオプラヤー川の水位が2メートル上がるだけで、被害が出ることはないとし、用意周到さをアピールした。
そして、一方で起きている問題が「水不足」である。バンコクの主要水源となる北部のプミポンダム、シリキットダムの貯水量は依然低水準。プミポンダムの貯水量は36%、シリキットダムは53%という状況となっている。気象局は、雨期の始まりが遅かったことに起因すると説明し、さらに雨期は早く終わると見込んでいる。そのため農業用水不足が懸念され、農作物の見通しは決して明るくない。農業・共同組合省は「今年の雨量は例年よりも13%少ない。前年比では18%減。これは30年ぶりの数字。節水を含めた計画を立てなければならない」と現状を危惧した。
農業大国において、水の問題は生命線であり、それは工場を持つ企業にとっても同様。何年間も言われ続けている課題が同時に起こっている今、現政権の手腕が問われるところでもある。
【写真上】6日、チェンライ県メーサーイ市の市場に鉄砲水が押し寄せた。(7日=タイラット)