「タイへ投資するなら、なんでもOK」と
言わんばかりの投資奨励
「今後、日系企業のタイ進出は、第3の波を迎える」。ソムキット経済担当副首相は、22日に開かれた日タイ企業の交流促進イベントで、そう言い切った。
発言の通り、タイ政府による日系企業へのタイ進出を促すラブコールは鳴り止まず、呼び水(投資奨励策)を次々に発表。同日、暫定政権は閣議を開き、優遇税制をエサに、特定の産業を一定地域に集積させる産業クラスターの設置を承認。新投資奨励制度をスタートさせる。
最大の目玉は、「スーパークラスター」だが、これは、自動車・部品、電気製品・通信機器、石油化学、食品、医療など、7つのカテゴリー別に、国内9県に集約。それぞれ、BOI(タイ投資委員会)から承認を受けた事業の法人税を事業開始から8年間免除し、その後5年間は50%控除する。また、特に重要な産業に対しては法人税免税期間を10〜15年に延長。機械の輸入関税の免除や、極めて優秀な専門家の個人所得税も免除する。
恩典はこれだけではない。同日のイベントで、経済通として知られるソムキット副首相は、日系企業関係者約500人を前に「優秀な研究者には、タイの永住権を付与し、土地の購入も認めることを検討している」と発言。すでにタイ政府は、投資奨励法(1977年)の改正案も承認し、事業認可の業務効率化と外国企業へのさらなる手厚い優遇措置を約束しているだけに、まさに大盤振る舞い。
タイ政府が進める執拗な投資誘致のテコ入れには理由がある。タイ工業省関係者が「今年1月に、これまでのゾーン制を廃止し、スタートした新投資奨励制度が不評で、外国企業の投資が激減しているんです」と明かす通り、BOIが、今年6月までに受理した申請件数は219件(前年同期407件)と半減。投資額に至っては268億バーツ(同2391億バーツ)まで落ち込んだ。頼みの綱の輸出も7ヵ月連続で前年割れ、観光産業も爆発事件で不透明なだけに、タイ政府は否が応でも焦る。つまり、外国直接投資の半分を占める日系企業を頼るのは必然というわけだ。日系企業にとって、うまみが増すことは大歓迎だが、欲を言えば、プラユット暫定政権の次の一手にも期待したい。